突然、顔や首がカーッと熱くなり、じっとりと汗が吹き出してくる——更年期に差し掛かった多くの女性が経験するこの症状は、「ホットフラッシュ(Hot Flash)」と呼ばれる更年期症状の代表的なひとつです。人前で大量に汗をかいてしまうことへの恥ずかしさや、夜中に寝汗で目が覚めてしまう辛さは、日常生活の質を大きく下げる原因になります。「更年期の汗を止めるにはどうすればいいの?」と悩んでいる方のために、この記事では汗が増える仕組みから、自分でできるセルフケア、医療機関での治療法まで、幅広くわかりやすく解説します。
目次
- 更年期に汗が増える仕組み
- ホットフラッシュとはどんな症状か
- 更年期の汗が起こりやすいシーンと特徴
- 更年期の汗を悪化させる生活習慣
- 日常でできる汗を止めるセルフケア7選
- 食事・栄養素で汗をコントロールする方法
- 漢方薬による更年期の汗対策
- 医療機関での治療法(HRT・その他)
- 発汗がひどい場合に受診すべき診療科
- まとめ
この記事のポイント
更年期の汗(ホットフラッシュ)はエストロゲン低下による体温調節の乱れが原因で、重ね着・深呼吸・有酸素運動などのセルフケアに加え、漢方薬やHRTなど医療機関での治療により改善が可能。症状が強い場合は婦人科への受診が推奨される。
🎯 更年期に汗が増える仕組み
更年期とは、一般的に閉経前後の約10年間(45〜55歳前後)を指し、卵巣機能の低下に伴って女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減少する時期です。このホルモンバランスの変化が、自律神経の働きに直接影響を及ぼすことが、更年期の汗の根本原因となっています。
エストロゲンは体温調節に関わる視床下部に対して重要な役割を担っています。エストロゲンが安定して分泌されているうちは、体温調節中枢がスムーズに機能し、発汗・血管拡張などのメカニズムが適切に働きます。しかし、更年期になりエストロゲンの分泌が不安定になると、視床下部が誤った「体温が上昇した」というシグナルを受け取り、実際には体温が上がっていないにもかかわらず、大量の汗をかかせる命令を出してしまいます。
この誤作動は「体温調節中枢の失調」と呼ばれ、自律神経全体のバランスが乱れることで引き起こされます。つまり、更年期の汗は「意志の力でコントロールできない生理的な反応」であり、性格や体質の問題ではありません。このことをまず理解しておくことが、適切な対策への第一歩になります。
Q. 更年期に汗が増える仕組みを教えてください。
更年期になるとエストロゲンの分泌が急減し、体温調節を司る視床下部が誤った「体温上昇」のシグナルを受け取ります。実際には体温が上がっていないにもかかわらず大量の発汗命令が出されるこの現象は「体温調節中枢の失調」と呼ばれ、意志の力でコントロールできない生理的反応です。
📋 ホットフラッシュとはどんな症状か
ホットフラッシュは、更年期症状の中でも特に多くの女性が経験する、突発的な熱感と発汗を特徴とした症状です。日本語では「のぼせ」「ほてり」などとも表現されます。
典型的な症状としては、顔・首・胸の上部などが突然ほてりを感じ始め、続いて大量の汗が噴き出すというものです。1回の発作は数秒から数分程度で治まることが多いですが、1日に何度も繰り返す場合もあります。発作が終わると今度は急に寒気や悪寒を感じることもあり、体温が激しく上下するような感覚に悩む方も少なくありません。
夜間に起こるホットフラッシュは「夜汗(ナイトスウェット)」とも呼ばれます。睡眠中に大量の汗で目が覚め、パジャマや寝具がぐっしょりと濡れてしまうケースもあります。睡眠の質が著しく低下するため、日中の倦怠感・集中力の低下・イライラなどの二次的な不調につながりやすい点で、生活への影響が特に大きい症状といえます。
なお、ホットフラッシュは更年期特有の症状ですが、甲状腺機能亢進症・高血圧・糖尿病・自律神経失調症・一部の薬剤の副作用などが原因で同様の症状が現れることもあります。自己判断のみで更年期と決めつけず、症状が続く場合は医師に診てもらうことが大切です。
💊 更年期の汗が起こりやすいシーンと特徴
更年期の発汗には、通常の汗とは異なる独特の特徴があります。どのような状況で起こりやすいかを知っておくことで、事前の備えや対処がしやすくなります。
まず、発汗の「唐突さ」が特徴的です。暑い場所にいなくても、激しい運動をしていなくても、何の前触れもなく突然始まります。会議中・電車の中・食事中・人と話している最中など、場所や時間を選ばないため、「人目が気になって外出したくない」「仕事に集中できない」という悩みにつながります。
次に、「トリガー(誘因)」の存在です。具体的には、温かい飲食物・アルコール・辛い食べ物・カフェイン・ストレス・緊張・温かい環境・夜間の就寝中などが発作のきっかけになりやすいとされています。自分のトリガーを把握しておくことで、発汗を予防する助けになります。
また、「発汗の部位」も通常とは異なることがあります。顔・首・頭・胸部など上半身に集中して汗が出るケースが多く、手のひらや脇の下から大量に汗をかく通常の緊張性発汗とは異なります。
さらに、更年期の発汗は「予測困難」という点でも精神的な負担が大きくなります。「またいつ汗が出るかわからない」という不安感そのものがストレスとなり、交感神経をさらに刺激して発汗を誘発するという悪循環に陥りやすいことも知っておく必要があります。
Q. 更年期の汗を悪化させる生活習慣は何ですか?
喫煙・過度な飲酒・ストレス・睡眠不足・運動不足・肥満が更年期の発汗を悪化させる主な要因です。ニコチンは自律神経を乱し、アルコールは血管を拡張させてホットフラッシュを誘発します。また肥満は体内の熱産生を増やすため、体重管理も更年期症状の緩和に有効とされています。
🏥 更年期の汗を悪化させる生活習慣
更年期の発汗は避けられない側面もありますが、生活習慣によって症状の程度が変わることが明らかになっています。以下の習慣が発汗を悪化させる要因として挙げられます。
喫煙は更年期症状を全般的に悪化させることが研究で示されています。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、自律神経のバランスを崩す働きがあるため、ホットフラッシュの頻度・強度が増しやすくなります。
飲酒も同様に発汗を促進する要因です。アルコールは血管拡張作用があり、体温を上昇させるため、飲酒後にホットフラッシュが起きやすくなります。特に就寝前の飲酒は夜汗を悪化させる傾向があります。
過度なストレスや睡眠不足は自律神経を乱し、体温調節機能をさらに不安定にさせます。忙しい生活の中でストレスをため込み、睡眠が不規則になると、更年期の発汗はより頻繁に、より激しく現れやすくなります。
運動不足も見逃せません。適度な運動は自律神経を整え、体温調節機能を正常に保つ助けになりますが、運動習慣がないと体温調節の柔軟性が失われ、ホットフラッシュが悪化する可能性があります。
また、高脂質・高糖質の食事や肥満も更年期症状を増悪させる要因です。肥満は体内の熱産生が増えるため、体温調節に負担がかかります。体重管理は更年期症状の緩和にも有効です。
⚠️ 日常でできる汗を止めるセルフケア7選
医療機関を受診する前、あるいは治療と並行して、日常生活の中で取り組めるセルフケアはたくさんあります。以下の7つの方法を参考にしてみてください。
🦠 1. 重ね着・通気性の良い衣類を選ぶ
ホットフラッシュが来たときにすぐ体温を下げられるよう、脱ぎ着しやすい重ね着スタイルが有効です。素材は吸汗速乾性に優れた綿・麻・機能性素材を選びましょう。ぴったりとした服よりも、体に風が通るゆったりとしたシルエットのほうが熱がこもりにくくなります。下着も通気性の良いものを選ぶことで、肌に触れる部分の不快感を軽減できます。
👴 2. 携帯用の冷却グッズを活用する
ハンディファン(携帯扇風機)・冷感スプレー・保冷剤・冷感タオルなどをバッグに常備しておくと、外出先でホットフラッシュが来たときに素早く対処できます。首の後ろや手首・足首など、大きな血管が皮膚の近くを通っている部分を冷やすと、効率よく体温を下げることができます。また、小型の扇子を持ち歩くだけでも十分な効果が得られます。
🔸 3. 深呼吸・腹式呼吸を実践する
ホットフラッシュの発作が始まったと感じたら、ゆっくりとした深呼吸を意識的に行いましょう。腹式呼吸(鼻からゆっくり息を吸い、口からゆっくり吐く)は副交感神経を活性化し、興奮した自律神経を落ち着かせる効果があります。北米閉経学会(NAMS)でも、ゆっくりした腹式呼吸がホットフラッシュの頻度を軽減させるという研究結果を紹介しており、薬を使わない方法として注目されています。
💧 4. 適度な有酸素運動を続ける
ウォーキング・軽いジョギング・水泳・ヨガ・サイクリングなどの有酸素運動を週3〜5回、1回30分程度を目安に継続することが推奨されています。運動習慣は自律神経のバランスを整え、エンドルフィンの分泌を促して精神的なストレスを緩和するほか、基礎体温の調節機能を高める効果があります。ただし、運動直後は体温が上がるため、激しすぎる運動は逆にホットフラッシュを誘発する場合もあります。自分のペースで無理なく続けることが大切です。
✨ 5. 睡眠環境を整える
夜汗による睡眠障害を軽減するために、寝室の温度・湿度を適切に保つことが重要です。一般的に、就寝時の室温は18〜22℃、湿度は40〜60%程度が快適とされています。また、寝具は吸汗性・放熱性の高い素材を選びましょう。薄手のものを複数枚重ねて、体温に合わせて調整できるようにしておくと便利です。就寝直前の入浴はシャワー程度にとどめ、ぬるめのお湯に短時間つかる程度が体温調節に優しい方法です。
📌 6. トリガーを把握して避ける
自分がどのような状況でホットフラッシュが起きやすいかを把握するために、日記をつけることが効果的です。食べたもの・飲んだもの・その日の気温・ストレスの度合い・発汗が起きた時間などを記録することで、自分特有のトリガーが見えてきます。辛い食べ物・アルコール・カフェイン・高温の環境・強いストレスなどが代表的なトリガーですが、人によって異なります。トリガーを知ることで、生活の中で意識的に避けることができるようになります。
▶️ 7. マインドフルネス・瞑想を取り入れる
マインドフルネス(今この瞬間に意識を向ける瞑想的な実践)は、更年期症状全般に対する精神的な対処能力を高めることが知られています。発汗そのものを消すわけではありませんが、「また汗が出るかもしれない」という不安や恐怖を和らげ、症状への過剰反応を減らす効果が期待できます。1日5〜10分程度でも継続することで、自律神経の安定化に貢献します。スマートフォンのアプリを活用する方法もあります。
Q. 更年期の汗に効果的な食事の工夫を教えてください。
大豆イソフラボンを含む豆腐・納豆・豆乳などの大豆食品を日常的に摂ることが推奨されます。一方、アルコール・カフェイン・辛い食べ物・熱い飲み物はホットフラッシュのトリガーになるため控えることが有効です。血糖値の急激な変動も自律神経を乱すため、1日3食の規則正しい食事も重要です。
🔍 食事・栄養素で汗をコントロールする方法
食事の内容は更年期の汗に大きな影響を与えます。何を食べるか・避けるかを意識することで、症状の緩和に役立てることができます。
大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と化学構造が似た「植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)」として知られており、更年期症状を緩和する可能性があるとして注目されています。豆腐・納豆・豆乳・味噌・枝豆などの大豆食品を日常的に取り入れることが推奨されています。ただし、過剰摂取はかえって悪影響を与える可能性があるため、サプリメントではなく食品からの摂取が基本です。厚生労働省では、大豆イソフラボンのサプリメントによる上乗せ摂取量の目安を1日30mgとしています。
ビタミンEは、血行を促進し、自律神経のバランスを整える働きがあるとされています。アーモンド・ひまわり油・アボカド・かぼちゃ・うなぎなどに多く含まれています。ビタミンEが更年期症状(特にホットフラッシュ)に対して効果的であるという研究報告もありますが、効果には個人差があります。
カルシウムとビタミンDも更年期の女性には積極的に摂りたい栄養素です。エストロゲンの低下は骨密度の低下にもつながるため、骨を守る目的からも重要です。牛乳・ヨーグルト・チーズ・小松菜・サーモン・サバなどを日々の食事に取り入れましょう。
逆に、避けるべき食品・飲み物としては、アルコール・カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンクなど)・辛い食べ物・熱い飲み物が挙げられます。これらはいずれも血管を拡張させたり、体温を上昇させたりする作用があり、ホットフラッシュのトリガーになりやすいことが報告されています。
また、食事の規則性も重要です。血糖値の急激な上昇・下降は自律神経を乱す要因になります。1日3食を規則正しく摂り、砂糖や精製された炭水化物(白い砂糖・白米・白パンなど)を摂りすぎないようにすることも、長期的な更年期症状の管理に有効です。
📝 漢方薬による更年期の汗対策
西洋医学的な治療に抵抗がある方や、まずは自然な方法で対処したいという方には、漢方薬という選択肢があります。日本では更年期症状に対して漢方薬が保険適用で処方される場合もあり、婦人科や内科・漢方外来などで相談することができます。
更年期の発汗・ホットフラッシュに対してよく使われる漢方薬としては、以下のようなものがあります。
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、更年期症状に最も広く使われる漢方薬のひとつです。イライラ・のぼせ・ほてり・肩こり・不眠・疲れやすさなど、多彩な症状を持つ方に適しているとされます。気(エネルギー)の流れを整え、熱を冷ます働きがあるとされています。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、血行を改善し、のぼせやほてりに効果が期待できる漢方薬です。特に顔が赤くなりやすい・頭に熱が集まりやすい・冷えのぼせ(足は冷たいのに顔はほてる)という方に向いているとされています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血を補い、水分代謝を整える漢方薬で、冷え性で体力がなく、顔色が優れない方に使われることが多いです。ほてり・発汗よりも冷えが主体の方に向いています。
女神散(にょしんさん)は、のぼせ・頭重感・ほてりが強い方に使われる漢方薬です。精神的な不安定さを伴う場合にも向いているとされています。
漢方薬は体質に合ったものを選ぶことが重要で、同じ症状でも体質によって適した薬が異なります。自己判断でドラッグストアの漢方薬を購入することも可能ですが、できれば漢方専門の医師や漢方薬局の薬剤師に相談して、自分の体質に合ったものを選んでもらうことをお勧めします。
Q. 更年期の汗の治療法にはどんな選択肢がありますか?
医療機関ではホルモン補充療法(HRT)が最も効果的な治療法として推奨されており、多くの方が開始後数週間以内に改善を実感します。HRTが使えない場合はSSRI・SNRI系抗うつ薬やガバペンチン・クロニジンも選択肢となります。婦人科では患者の体質やライフスタイルに合わせた治療方針を相談できます。
💡 医療機関での治療法(HRT・その他)
セルフケアや漢方薬でも改善が難しい場合、または症状が日常生活に大きな支障をきたしている場合は、医療機関での治療を検討するべきです。更年期の発汗に対する主な医療的治療法を説明します。
🔹 ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)は、更年期症状に対して最も効果的な治療法のひとつとして、世界中の婦人科学会が推奨しています。低下したエストロゲンを外から補充することで、体温調節中枢の誤作動を抑え、ホットフラッシュを含む更年期症状を根本的に改善する効果が期待できます。
HRTにはパッチ(貼り薬)・ジェル(塗り薬)・飲み薬(内服薬)などの剤形があります。子宮がある方には、子宮内膜を保護するために黄体ホルモンと組み合わせた製剤が使用されます。子宮を摘出している方はエストロゲン単独療法が可能です。
HRTの効果はホットフラッシュ・発汗の軽減に特に顕著で、多くの方が開始後数週間以内に改善を実感します。また、骨粗しょう症の予防・皮膚や粘膜の健康維持・気分の安定化など、様々な更年期症状への効果も認められています。
ただし、HRTには適応と禁忌があります。乳がん・子宮体がん・静脈血栓症などの既往歴がある方には原則使用できない場合があります。また、長期使用については乳がんリスクへの影響も議論されており、担当医とリスクとベネフィットをよく相談した上で判断することが大切です。近年は低用量で体への負担が少ない製剤も登場しており、適切に使用することで多くの方が安全に恩恵を受けられるとされています。
📍 低用量ピル(OC)

閉経前の更年期(周閉経期)にある方で、避妊も兼ねたい場合には低用量ピルが選択肢になることがあります。低用量ピルはエストロゲンと黄体ホルモンが含まれており、ホルモンバランスを安定させてホットフラッシュや発汗を緩和する効果が期待できます。35歳以上の喫煙者には使用制限があるなど、禁忌事項があるため、医師との相談が必要です。
💫 抗うつ薬・抗不安薬
HRTが使えない場合(乳がんの既往があるなど)でも、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が、ホットフラッシュに対して一定の効果を示すことが研究で明らかになっています。代表的なものとしてはパロキセチン・ベンラファキシン・エスシタロプラムなどがあります。これらは精神症状(抑うつ・不安)も同時に改善できるため、精神的な不調が目立つ方にも適しています。ただし、更年期症状への使用は適応外処方となる場合もあり、医師の判断が必要です。
🦠 クロニジン
もともとは降圧薬(血圧を下げる薬)として使われているクロニジンは、ホットフラッシュの軽減にも効果があるとされており、HRTが使えない場合の代替薬として用いられることがあります。副作用として口の渇き・眠気・便秘などが出ることがあります。
👴 ガバペンチン
てんかんや神経痛に使われるガバペンチンも、ホットフラッシュへの有効性が複数の研究で示されています。特に夜間の発汗・睡眠障害を伴う方に効果的とされることがあります。HRTが使えない乳がん治療中の患者さんへの使用実績もあります。
🔸 エクオール含有サプリメント
エクオールは大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されて生成される物質で、エストロゲンに似た構造を持ちます。しかし、エクオールを作り出せる腸内細菌を持っているのは日本人女性の約50%程度とされており、作れない方にはいくら大豆を食べても産生されません。エクオールを直接補充できるサプリメントが市販されており、ホットフラッシュや首・肩のこりへの有効性を示す国内の研究報告もあります。医薬品ではなく食品扱いのため、効果には個人差がありますが、HRTを望まない方の選択肢のひとつとして婦人科医が推奨することもあります。
✨ 発汗がひどい場合に受診すべき診療科
更年期の汗について医療機関を受診する場合、最初は婦人科(産婦人科)を受診するのが最も適切です。更年期外来や女性外来を設けているクリニックであれば、ホルモン検査(血中のFSH・LH・エストラジオールの測定)を行い、更年期かどうかの診断を正確に行ってもらうことができます。
かかりつけの内科がある方は、まず内科に相談するのも一つの方法です。甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)・糖尿病・高血圧など、更年期症状に似た発汗を引き起こす別の疾患がないかを確認してもらう意味でも、内科での検査は有意義です。
精神的な症状(不眠・うつ・強い不安感)が前面に出ている場合は、精神科・心療内科への受診も視野に入れましょう。更年期のホルモン変化は精神的な不調とも密接に関連しており、精神科的な支援が有効なケースもあります。
受診の際には、症状が始まった時期・症状の頻度と程度・最終月経の時期・他に気になる体の変化などをメモしておくと、診察がスムーズになります。また、気になることは遠慮せず医師に質問し、自分に合った治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
なお、以下のような場合は速やかに受診することをお勧めします。発汗に加えて体重の急激な変化・動悸・手の震え・高熱・強い頭痛・胸痛などが伴う場合は、更年期以外の病気が原因である可能性があります。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、ホットフラッシュや夜汗に悩まれて受診される更年期世代の女性が多く、「まさか病気じゃないかと不安で…」とひとりで長期間抱え込んでいたというケースも少なくありません。エストロゲンの低下による体温調節の乱れは意志の力でコントロールできるものではないため、セルフケアと並行して、必要に応じてHRTや漢方薬など患者さんの体質・ライフスタイルに合わせた治療法を組み合わせることで、多くの方に症状の改善を実感していただいています。「更年期だから仕方ない」と諦めず、ぜひお気軽にご相談ください。」
📌 よくある質問
更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少し、体温調節を司る視床下部が誤った「体温上昇」のシグナルを受け取ってしまいます。その結果、実際には体温が上がっていないにもかかわらず、大量の発汗命令が出されます。これは意志の力でコントロールできない生理的な反応です。
アルコール・カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンクなど)・辛い食べ物・熱い飲み物は、血管を拡張させたり体温を上昇させたりする作用があり、ホットフラッシュのトリガーになりやすいとされています。日頃から摂取量を意識して控えることが症状の緩和につながります。
通気性の良い重ね着・携帯用冷却グッズの活用・腹式呼吸・週3〜5回の有酸素運動・睡眠環境の整備・自分のトリガーの把握と回避・マインドフルネスの実践など、7つのセルフケアが有効です。複数を組み合わせることで、より効果的に症状を和らげることが期待できます。
漢方薬は更年期の発汗対策として有効な選択肢のひとつです。加味逍遥散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・女神散などがよく使われます。ただし、体質に合った薬を選ぶことが重要で、効果には個人差があります。自己判断よりも、漢方専門の医師や薬剤師に相談して選んでもらうことをお勧めします。
まずは婦人科(産婦人科)の受診が最適です。更年期外来ではホルモン検査で正確な診断が受けられます。甲状腺疾患など他の病気の可能性を確認したい場合は内科も有効です。当院でも、患者さんの体質やライフスタイルに合わせてHRTや漢方薬などを組み合わせた治療を行っています。
🎯 まとめ
更年期の汗(ホットフラッシュ・夜汗)は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が自律神経の体温調節機能に影響を与えることで起こる、更年期を代表する症状のひとつです。突然顔や体がカーッと熱くなり、大量の汗が吹き出す発作は、日常生活の質を著しく下げることがあります。
しかし、適切な対処を行うことで症状を和らげることは十分可能です。通気性の良い衣服の選択・冷却グッズの活用・深呼吸・有酸素運動・睡眠環境の整備・トリガーの回避・マインドフルネスなど、日常でできるセルフケアから始めることができます。また、大豆食品や抗酸化ビタミンを取り入れた食事の工夫、漢方薬の活用も有効な選択肢です。
セルフケアで改善が不十分な場合や、症状が強くて日常生活に支障が出ている場合は、婦人科などの医療機関を受診することを強くお勧めします。ホルモン補充療法(HRT)をはじめ、さまざまな医学的治療法が用意されており、一人ひとりの状況・体質・希望に合わせた治療を選ぶことができます。
更年期の汗は決して「我慢するしかないもの」ではありません。正しい知識を持ち、自分に合った方法で上手に対処することで、更年期をより快適に過ごすことができます。気になる症状がある方は、ひとりで抱え込まずに専門家に相談してみてください。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 更年期症状・大豆イソフラボンのサプリメント摂取量の目安(1日30mg)・ホルモン補充療法に関する公式情報および女性の健康に関する政策情報の参照
- PubMed – ホットフラッシュのメカニズム・HRT・SSRI/SNRI・ガバペンチン・クロニジンの有効性・エクオールの臨床効果・腹式呼吸によるホットフラッシュ軽減に関する査読済み研究論文の参照
- WHO(世界保健機関) – 更年期の定義・閉経前後の期間・エストロゲン低下による身体的影響・HRTの適応と禁忌に関する国際的な医学的見解の参照