虫刺されアブの症状と対処法|かゆみや腫れへの正しいケアを解説

夏から秋にかけて、山や川、農村地帯などでアウトドアを楽しんでいる際に、突然刺されるような鋭い痛みを感じた経験がある方もいるのではないでしょうか。その原因の一つとして挙げられるのが「アブ」による虫刺されです。アブはハチやムカデほど広く知られていないかもしれませんが、刺されると強い痛みや腫れ、かゆみを引き起こし、場合によってはアナフィラキシーショックという命に関わる重篤なアレルギー反応を起こすこともあります。本記事では、アブによる虫刺されの特徴、症状、正しい応急処置の方法、受診の目安、そして予防策まで詳しく解説します。


目次

  1. アブとはどのような虫か
  2. アブに刺されると起こる症状
  3. アブ刺されの応急処置の方法
  4. 医療機関への受診が必要なタイミング
  5. アナフィラキシーショックとは
  6. 病院での治療方法
  7. アブ刺されの予防策
  8. アブと間違えやすい虫との違い
  9. まとめ

この記事のポイント

アブに刺されると皮膚を切り裂く痛み・腫れ・かゆみが生じ、アナフィラキシーショックのリスクもある。応急処置は流水洗浄と冷却が基本で、全身症状が出た場合は直ちに救急車を呼ぶことが重要。

🎯 アブとはどのような虫か

アブは、双翅目(ハエ目)アブ科(Tabanidae)に属する昆虫の総称です。日本国内にはシロフアブ、メクラアブ、ウシアブなど複数の種類が生息しており、体長はおよそ8〜30ミリメートルと種類によって異なります。体の色は茶褐色や黒色のものが多く、ずんぐりとした体型が特徴です。目が大きく複眼になっているため、「メクラアブ」という名称が付いた種もありますが、現在では差別的表現として「ウシアブ」「アブ」などの名称が一般的に使われています。

アブは主に6月から9月ごろにかけて活動が活発になり、特に気温が高く湿度が高い夏の時期に多く見られます。生息場所は山間部、農村、牧場、川沿いなど自然環境が豊かな場所が多く、都市部ではあまり見られません。しかし、川沿いでのキャンプや登山、農作業中などに遭遇することは珍しくありません。

刺すのはメスのアブだけです。メスは産卵のために血液中のタンパク質を必要とするため、哺乳類や鳥類の血を吸う習性があります。人間もその対象となります。一方、オスは花の蜜や植物の汁を吸うだけなので、人を刺すことはありません。

アブの口の構造は、蚊とは異なります。蚊は針のような口吻(こうふん)で皮膚をそっと刺すのに対し、アブはハサミのような形状の口器を持ち、皮膚を切り裂くようにして出てきた血液を舐め取ります。この刺し方の違いが、蚊とは比べ物にならないほど強い痛みを生じさせる原因です。刺された瞬間に「ズキッ」とした鋭い痛みを感じるのはこのためです。

Q. アブに刺された直後にすべき応急処置は?

アブに刺されたらすぐにその場を離れ、傷口を石けんと流水で丁寧に洗い流してください。その後、布に包んだ保冷剤や氷で15〜20分程度患部を冷やします。強いかゆみがあってもかき壊すと二次感染の原因になるため、市販のステロイド含有外用薬を活用しましょう。

📋 アブに刺されると起こる症状

アブに刺された後に現れる症状は、大きく局所症状と全身症状に分けられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

🦠 局所症状

刺された直後から強い痛みを感じるのが最初の症状です。蚊に刺された場合は痛みをほとんど感じないことが多いですが、アブの場合は皮膚を切り裂くため、刺された瞬間から激しい痛みを伴います。この痛みは数分から数十分続くことがあります

その後、刺された部位を中心に赤みや腫れが現れてきます。腫れの大きさは個人差がありますが、数センチメートル程度に広がることも珍しくありません。また、強いかゆみが生じることも多く、これは唾液中のアレルゲンに対する免疫反応によるものです。

症状の程度には個人差が大きく、初めてアブに刺された場合は比較的軽い症状で済むことがあります(「未感作」の状態)。しかし、過去にアブに刺されたことがある人が再び刺されると、「感作」が成立しているために免疫反応が強く起こり、より広範囲に腫れたり、強いかゆみが長引いたりすることがあります。これを「即時型反応」と呼びます。

また、刺されてから数時間後に症状がより悪化する「遅発型反応」が現れることもあります。翌日になって腫れが大きくなったり、発赤が広がったりする場合があり、これはアレルギー性の皮膚炎に近い反応です。

刺された傷口は小さな切り傷状になっているため、かき壊してしまうと細菌が侵入し、二次感染(とびひや蜂窩織炎など)を引き起こすリスクがあります。特に子どもはかゆみに耐えられずかいてしまいがちなので注意が必要です。

👴 全身症状

アブ刺されで特に注意が必要なのは、全身に及ぶアレルギー反応です。刺された後に以下のような症状が現れた場合は、重篤なアレルギー反応が起きている可能性があります。

じんましんや全身の発疹、顔や唇の腫れ、目のかゆみや充血などが皮膚・粘膜症状として現れることがあります。また、鼻水やくしゃみ、せき、のどの締め付け感、呼吸困難などの呼吸器症状が出ることもあります。さらに重篤なケースでは、めまい、意識の消失、血圧低下、脈の異常など循環器系の症状が現れるアナフィラキシーショックに至ることもあります

アナフィラキシーショックは命に関わる緊急状態であり、発症から数分〜数十分以内に対処しなければ死に至ることもあります。アブに刺されてから15〜30分以内にこれらの症状が出た場合は、ただちに救急車を呼ぶ必要があります。

💊 アブ刺されの応急処置の方法

アブに刺された後、適切な応急処置を行うことで症状の悪化を防ぐことができます。以下の手順を覚えておきましょう。

🔸 すぐにその場から離れる

アブは1匹だけで行動することが多く、ハチのように集団で攻撃してくることは基本的にありませんが、刺された場所にとどまると別のアブに再び刺される可能性があります。刺されたことに気づいたらすぐにその場所を離れるようにしましょう。

💧 傷口を流水で洗い流す

刺された部位を清潔な流水で十分に洗い流します。石けんを使って丁寧に洗うと、唾液や細菌を除去する効果があります。これにより二次感染のリスクを下げることができます。蚊に刺された場合と異なり、アブは皮膚を切り裂いて血を吸うため、傷口が残ります。傷口への細菌侵入を防ぐためにも、早めに洗浄することが重要です。

✨ 患部を冷やす

洗浄後、清潔なタオルや布などに包んだ保冷剤や氷を患部に当てて冷やします。冷やすことで炎症反応を抑え、腫れや痛み、かゆみを軽減することができます。ただし、直接氷を皮膚に当てると凍傷のリスクがあるため、必ず布などで包んでから使用してください。15〜20分程度冷やすのが目安です

📌 かかない・こすらない

かゆみが強くても、できるだけかいたりこすったりしないようにすることが大切です。皮膚をかき壊すと細菌が侵入しやすくなり、二次感染の原因になります。また、かくことで組織液が広がり、腫れが悪化することもあります。かゆみが強い場合は市販のかゆみ止めクリームを使用するか、医療機関を受診して処方薬をもらうことをおすすめします。

▶️ 市販薬の使用

ドラッグストアで購入できる虫刺され用の外用薬を使用することも有効です。市販のステロイド含有外用薬(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン酢酸エステルなど)は炎症やかゆみを抑える効果があります。抗ヒスタミン成分を含む外用薬もかゆみの軽減に役立ちます。ただし、症状が強い場合や広範囲に及ぶ場合は、医療機関で適切な強さのステロイド外用薬を処方してもらうほうが効果的です。

なお、よく「刺された箇所を絞り出す(毒を吸い出す)」という方法を耳にすることがありますが、アブの場合は毒液を注入するわけではなく、唾液が傷口に入り込む形のため、吸い出しの効果はほとんどありません。また、傷口を無理に絞ることで皮膚を傷つけ、二次感染のリスクが高まる可能性があるため、推奨されていません。

Q. アブ刺されでアナフィラキシーが疑われる症状は?

アブに刺されてから15〜30分以内に、全身のじんましん・顔やのどの腫れ・呼吸困難・めまい・意識の消失・血圧低下などが現れた場合はアナフィラキシーショックの疑いがあります。これは命に関わる緊急状態であるため、自力での移動はせずただちに119番へ電話してください。

🏥 医療機関への受診が必要なタイミング

アブに刺された場合、どのようなケースで医療機関を受診すべきでしょうか。以下に目安を示します。

🔹 すぐに救急受診が必要なケース

以下の症状が刺された後15〜30分以内に現れた場合は、アナフィラキシーショックの可能性があります。ただちに119番に電話して救急車を呼んでください。

全身にじんましんや発疹が広がる、顔・唇・のどが腫れる、呼吸が苦しくなる・声がかすれる・のどが締まる感じがある、めまいや意識がぼんやりする、血圧低下で冷や汗が出る、嘔吐や腹痛が起きるといった症状が見られる場合は危険信号です。このような症状が出た際は、自分で車を運転して病院に行こうとせず、その場で安静にして救急車を呼ぶことが最優先です。もし本人や周囲の人がエピネフリン自己注射薬(エピペン)を携帯している場合は、指示に従って使用してください

📍 早めに受診することが望ましいケース

以下のような場合は、緊急性はやや低いものの、早めに皮膚科または内科・アレルギー科を受診することをおすすめします。

刺された部位の腫れが直径5センチメートル以上に広がっている、腫れが24〜48時間経っても改善しない・悪化している、刺された部位から赤みが広がって熱を持っている(二次感染の疑い)、発熱や強い倦怠感がある、市販薬を使用してもかゆみや痛みがひどい、顔や首・目の周りなどデリケートな部位を刺された、子どもや高齢者が刺されて症状が強い、といった場合です。

特に二次感染(皮膚が赤く熱を持ちながら腫れが広がっていく場合)が疑われる場合は、抗生物質による治療が必要になることがありますので、速やかな受診が重要です。

⚠️ アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックは、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が体内に入ったことで、免疫系が過剰に反応し、全身に急激かつ重篤なアレルギー症状が生じる状態です。アブ刺されによるアナフィラキシーはハチほど多くはありませんが、絶対にないわけではなく、過去に強いアレルギー反応を示したことがある人や、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患を持つ人は特に注意が必要です

アナフィラキシーの発症メカニズムを簡単に説明すると、アブの唾液に含まれるタンパク質成分が体内でアレルゲンとして認識され、IgE抗体が産生されます(感作)。その後、再び同じアレルゲンにさらされると(再刺激)、IgE抗体がアレルゲンと結合し、マスト細胞などから大量のヒスタミンやその他の化学物質が一気に放出されます。これが全身の血管拡張、血圧低下、気道収縮などを引き起こし、アナフィラキシーショックとなります。

アナフィラキシーショックの特徴的な点は、症状の進行が非常に速いことです。刺されてから数分以内に症状が始まり、治療なしでは急速に悪化することがあります。そのため、早期認識と迅速な対応が命を救います。

過去にアブに刺されて全身症状(じんましん、呼吸困難、意識低下など)を経験したことがある方は、アレルギー科や皮膚科を事前に受診し、エピネフリン自己注射薬(エピペン)の処方を検討してもらうことをおすすめします。エピペンはアナフィラキシー症状が出た際に太ももの外側に自分で注射するもので、症状を一時的に抑える効果があります。アウトドア活動をする際は必ず携帯しましょう。

Q. アブと蚊やブユに刺された場合の見分け方は?

アブは皮膚を切り裂いて血を吸うため、刺された瞬間から「ズキッ」とした強い痛みを感じ、小さな切り傷状の痕が残るのが特徴です。蚊は刺された瞬間がほぼ無痛で後からかゆみが出ます。ブユも刺時は無痛ですがアブより体が小さく、渓流付近での被害が多い点で区別できます。

🔍 病院での治療方法

アブ刺されで医療機関を受診した場合、症状の程度に応じてさまざまな治療が行われます。

💫 局所症状に対する治療

軽度〜中等度の局所症状(腫れ、赤み、かゆみ)に対しては、ステロイド外用薬(副腎皮質ステロイドのクリームや軟膏)が処方されることが多いです。市販薬よりも強力なステロイドを使用することで、炎症とかゆみを効果的に抑えることができます。

症状が強い場合には、ステロイドの内服薬や抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)の内服薬が処方されることもあります。これにより全身的な炎症反応を抑え、かゆみを軽減します。

🦠 二次感染への対応

刺された傷口に細菌が侵入して二次感染を起こしている場合(皮膚が赤く腫れ、熱感があり、痛みが続く状態)は、抗生物質の内服または外用薬が処方されます。蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮下組織の感染症に発展している場合は、入院して点滴による抗生物質治療が必要になることもあります

👴 アナフィラキシーへの対応

アナフィラキシーショックが起きている場合は、救急外来での緊急治療が行われます。エピネフリン(アドレナリン)の注射が第一選択治療であり、血圧を上げ、気道の収縮を緩和します。同時に酸素投与、点滴による輸液、抗ヒスタミン薬やステロイドの静脈注射なども行われます。症状が安定した後も、二峰性反応(いったん回復した後に数時間後に再び症状が悪化すること)の可能性があるため、数時間の経過観察が必要です。

🔸 アレルギー検査

アブ刺されで強いアレルギー反応を起こした場合、アレルギー科でアレルギー検査(血中IgE抗体検査など)を受けることが推奨されます。アブに対する特異的IgE抗体の有無を確認することで、再度刺された場合のリスクを評価し、今後の対策(エピペンの携帯など)を立てることができます。

📝 アブ刺されの予防策

アブに刺されないようにするための予防策をいくつか紹介します。アウトドア活動の際には事前に準備しておくことが大切です。

💧 適切な服装を選ぶ

アブが活動する場所(山、川、牧場など)に出かける際は、肌の露出を少なくすることが基本的な予防策です。長袖・長ズボンを着用し、靴下や手袋も活用しましょう。特にアブは手首、足首、首、顔など皮膚の薄い部分を好んで刺す傾向があります。袖口や足首はしっかりとふさいでおくと効果的です。

また、アブは色に対する反応があるとされており、明るい色よりも暗い色(黒や濃い青など)に引き寄せられやすいと言われています。明るい色の服装を選ぶと多少防御効果が期待できます。ただし、これはあくまで傾向であり、完全に防ぐものではありません。

✨ 虫よけスプレーを使用する

ディートやイカリジン(ピカリジン)を有効成分とする虫よけスプレーはアブに対しても一定の効果があります。特にディートは濃度が高いほど持続時間が長く、アブをはじめとするさまざまな虫に効果的です。肌に直接スプレーするタイプと、服の上から使用するタイプがあります。子どもには年齢に応じた濃度のものを選んでください。ディートは12歳未満の子どもには使用を制限している製品もあるため、製品の注意書きをよく確認しましょう。

なお、植物由来の天然成分(ユーカリ、シトロネラなど)を含む虫よけ製品は、天然成分であることから安全と思われがちですが、ディートやイカリジンと比較すると効果は劣ることが多いため、アブが多い環境では化学成分の虫よけ製品を選ぶことをおすすめします。

📌 帽子・ネットを活用する

アブが多い環境では、顔周りを守るために虫よけネット付きの帽子を使用することも有効です。養蜂家が使うような顔全体を覆うタイプのネットは、顔や首への刺されを確実に防ぐことができます。登山や農作業など長時間屋外で作業する際には特に有効です。

▶️ アブの多い時間帯と場所を把握する

アブは日中の日差しが強い時間帯(午前10時〜午後3時ごろ)に特に活発に活動します。この時間帯のアウトドア活動には特に注意が必要です。また、牛や馬などの大型哺乳類が飼育されている農場や牧場の近く、川沿いの湿った環境はアブが多く生息する場所です。これらの場所では特に注意を払いましょう。

🔹 強い香りを避ける

アブは強い匂いに引き寄せられることがあります。アウトドア活動の際は、強い香水や芳香のあるボディローション、シャンプーの使用は控えめにすることが望ましいとされています。また、汗の匂いもアブを引き寄せる要因の一つです。こまめに汗をふき取ることも対策の一つになります。

📍 アブを見かけたら近づかない

アブを見かけたら、素早く追い払おうとしたり、手で叩こうとするのは逆効果になることがあります。急な動きはアブを刺激することがあるため、静かにゆっくりその場を離れることが賢明です。アブは動くものに反応する傾向があるため、素早い動作は避けましょう。

Q. アブ刺されを予防するための効果的な対策は?

アブが活動する山や川沿いへ出かける際は、長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、袖口や足首をしっかりふさぐことが基本です。ディートやイカリジンを成分とする虫よけスプレーも効果的です。アブは黒や濃い青の暗い色に引き寄せられやすいため、明るい色の服装を選ぶことも予防につながります

💡 アブと間違えやすい虫との違い

アブは見た目が他の虫と似ていることがあり、刺されたのがアブかどうか分からないというケースもあります。間違えやすい虫との特徴の違いを整理しておきましょう。

💫 アブとハチの違い

ハチとアブは見た目が似ていることがありますが、いくつかの点で異なります。ハチは体にくびれがありますが、アブはくびれがなくずんぐりした体型です。ハチは針(毒針)で刺しますが、アブは口器で皮膚を切り裂いて血を吸います。また、ハチに刺された場合は毒針が残っている可能性がありますが(ミツバチの場合)、アブの場合は針を残しません

ハチは複数回刺した際のアナフィラキシーリスクが特に高く知られていますが、アブも同様のリスクがあることを忘れてはいけません。どちらに刺されたかを特定するよりも、刺された後の症状に注目して対応することが重要です。

🦠 アブとブユ(ブヨ)の違い

ブユ(ブヨ)はアブと同様に皮膚を切り裂いて血を吸う吸血昆虫ですが、体のサイズが全く異なります。ブユはアブよりもはるかに小さく(2〜5ミリメートル程度)、刺された直後は痛みをほとんど感じないことが多いです(麻酔成分を含む唾液のため)。しかし、しばらくするとアブと同様に強いかゆみや腫れが生じます。ブユは山地の清流付近に多く生息し、特に渓流釣りや沢登りをする際に被害を受けやすいです。

アブは刺された瞬間から痛みを感じるのに対し、ブユは後から症状が出てくるという違いがあります。症状が似ているため混同されることがありますが、対処法は基本的に同じです。

👴 アブと蚊の違い

蚊はアブと比べてはるかに小さく(体長5〜15ミリメートル)、細くて長い脚と針のような口吻が特徴です。蚊に刺された場合は麻酔成分が含まれる唾液のため、刺された瞬間は痛みを感じないことが多いですが、後からかゆみが出てきます。アブに刺された場合は刺された瞬間から強い痛みを感じるため、区別は比較的しやすいと言えます。

また、蚊は様々な感染症(デング熱、マラリア、日本脳炎など)を媒介することがありますが、日本国内に生息するアブについては現時点で感染症の主要な媒介虫としての報告は多くありません。ただし、国外では一部の寄生虫感染症を媒介するアブも存在するため、海外でアブに刺された際は注意が必要です

🔸 刺し口の特徴

刺し口(刺された後の傷の形状)も、刺した虫を特定するヒントになることがあります。アブに刺された場合は、小さな切り傷状の痕が残ることがあります。ハチの場合は点状の刺し傷、蚊の場合はほぼ無痛の細い針孔が残ります。ブユに刺された場合は、やや陥没したような丸い傷が残ることがあります。ただし、これらの特徴は素人目には判断が難しいことも多く、症状や状況(どこにいたか)から推測することも重要です。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

「当院では、夏のアウトドアシーズンになるとアブ刺されによる受診が増える傾向にあり、「蚊に刺されたと思っていたが痛みが強くて心配になった」というお声を多くいただきます。アブは皮膚を切り裂いて血を吸う特性上、蚊とは比べ物にならない強い痛みと腫れを生じさせますので、まずは流水での洗浄と冷却を丁寧に行っていただくことが大切です。全身にじんましんが広がる・呼吸が苦しくなるなどの症状はアナフィラキシーのサインですので、そのような場合はためらわず救急車を呼んでいただき、軽症でも症状が長引く際はお気軽にご相談ください。」

✨ よくある質問

アブに刺されたときの応急処置は何をすればいいですか?

まず刺された場所からすぐに離れ、傷口を石けんと流水で丁寧に洗い流してください。その後、布に包んだ保冷剤や氷で15〜20分程度患部を冷やします。かゆみがあっても強くかいたりこすったりしないことが重要です。かゆみが強い場合は市販のステロイド含有外用薬や抗ヒスタミン薬を使用しましょう。

アブに刺されたらすぐに病院へ行くべきですか?

刺後15〜30分以内に全身のじんましん、顔・のどの腫れ、呼吸困難、めまいなどが現れた場合はアナフィラキシーショックの疑いがあり、直ちに救急車を呼んでください。腫れが直径5cm以上に広がる、48時間以上改善しない、発熱・倦怠感があるといった場合も、早めに皮膚科などを受診することをおすすめします

アブと蚊に刺された場合、どう見分ければよいですか?

最大の違いは刺された瞬間の痛みです。アブは皮膚を切り裂いて血を吸うため、刺された瞬間から「ズキッ」とした強い痛みを感じます。一方、蚊は麻酔成分を含む唾液で刺すため、刺された瞬間はほぼ無痛で、後からかゆみが出てきます。アブに刺されると小さな切り傷状の痕が残ることも特徴の一つです。

アブに刺されないための効果的な予防策はありますか?

長袖・長ズボンで肌の露出を減らし、袖口や足首をしっかり閉じることが基本です。ディートやイカリジンを成分とする虫よけスプレーも効果的です。また、アブは黒や濃い青などの暗い色に引き寄せられやすいため、明るい色の服装を選ぶとよいでしょう。強い香水や芳香製品の使用を控えることも対策の一つです。

過去にアブで強いアレルギー反応が出た場合、どう備えればよいですか?

過去にアブ刺されで全身症状(じんましん、呼吸困難、意識低下など)が出たことがある方は、事前にアレルギー科を受診されることをおすすめします。血中IgE抗体検査でリスクを評価してもらい、必要に応じてエピネフリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらいましょう。アウトドア活動の際は必ず携帯することが大切です。

📌 まとめ

アブによる虫刺されは、刺された瞬間の強い痛みから始まり、腫れやかゆみが数日続くことがある厄介な虫刺されです。通常は局所症状が主ですが、アレルギー反応が強い方や過去にアブ刺されで全身症状が出たことがある方は、アナフィラキシーショックに注意が必要です

刺された後の基本的な対処は、患部を流水でよく洗浄し、冷やしてかかないようにすることです。市販の虫刺され薬も症状軽減に役立ちますが、症状が強い場合や改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。全身症状(じんましん、呼吸困難、意識低下など)が現れた場合は、ただちに救急車を呼んでください

予防の観点からは、アブが多い環境に出かける際には肌の露出を減らす服装を選び、虫よけスプレーを活用することが効果的です。また、過去にアブ刺されで強いアレルギー反応を経験したことがある方は、アレルギー科を受診してエピペンの処方を検討し、アウトドア活動の際には必ず携帯するようにしましょう。

アブに刺されてしまった場合でも、正しい知識と適切な対処法を身につけておくことで、症状の悪化を防ぎ、安全に回復することができます。心配な症状が続く場合や不安な場合は、ためらわずに医療機関にご相談ください。

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📚 参考文献

  • 日本皮膚科学会 – 虫刺されによる皮膚症状(局所反応・アレルギー反応)の診断基準や治療指針、ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬の使用方法に関する診療ガイドライン
  • 厚生労働省 – アナフィラキシーショックの定義・症状・緊急対応(エピネフリン自己注射薬の使用を含む)および医療機関受診の目安に関する公式情報
  • 国立感染症研究所 – 吸血昆虫(アブ・ブユ等)の生態・感染症媒介リスクおよび国内外における虫刺され関連疾患の疫学情報
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