トラネキサム酸の副作用|知っておくべき症状・リスクと対処法
シミ・肝斑の改善や喉の痛みを和らげるなど、様々な目的で広く使用されるトラネキサム酸。美容や健康に関心の高い方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、薬である以上、その効果の裏には副作用のリスクも存在します。
この記事では、トラネキサム酸の副作用について、具体的な症状からリスクのあるケース、正しい付き合い方までを徹底的に解説します。安心して服用を続けるために、ぜひ正しい知識を身につけてください。
目次
トラネキサム酸の主な副作用一覧
トラネキサム酸の副作用は、頻度は高くないもののいくつか報告されています。主な症状をカテゴリー別に見ていきましょう。
消化器系の副作用
比較的報告されやすいのが、消化器系の症状です。
- 食欲不振
- 吐き気、嘔吐
- 胸やけ
- 下痢
これらの症状は、薬の服用を中止すると改善することがほとんどですが、症状が続く場合や日常生活に支障をきたす場合は、医師や薬剤師に相談してください。
過敏症(アレルギー反応)の副作用
体質によっては、アレルギー反応として皮膚に症状が現れることがあります。
- 発疹
- かゆみ
このような症状が出た場合は、過敏症の可能性があるため、直ちに服用を中止し、医療機関を受診しましょう。
その他のまれな副作用
頻度は低いですが、以下のような副作用も報告されています。
- 眠気
- 頭痛
- めまい
これらの症状は一過性の場合もありますが、注意が必要です。
トラネキサム酸と血栓症のリスク
「トラネキサム酸は血栓症のリスクがある」と聞いて不安に思う方も多いでしょう。トラネキサム酸には、血液を溶かす働きを持つ「プラスミン」を抑制する作用があります。これにより、一度できた血栓が溶けにくくなる可能性が指摘されています。
しかし、健康な人が医師の指示通りの用法・用量で服用する限り、血栓症を発症するリスクは極めて低いとされています。過度に心配する必要はありませんが、後述する「服用してはいけない人・注意が必要なケース」に当てはまる方は特に注意が必要です。
トラネキサム酸服用と白髪の関連性
インターネット上などで「トラネキサム酸を飲むと白髪が増える」という情報を見かけることがありますが、現時点で、トラネキサム酸の服用と白髪の増加に直接的な因果関係を示す医学的な根拠はありません。
白髪は加齢や遺伝、ストレス、生活習慣など様々な要因が複雑に絡み合って発生します。トラネキサム酸の服用時期と白髪が増える時期が偶然重なった可能性も考えられます。
トラネキサム酸を服用してはいけない人・注意が必要なケース
トラネキサム酸は、誰でも安全に服用できるわけではありません。以下に該当する方は、副作用のリスクが高まるため、服用が禁止されていたり、特に慎重な判断が必要となったりします。
血栓症の既往歴やリスクがある人
- 脳梗塞、心筋梗塞、血栓性静脈炎などの既往歴がある方
- 血栓ができやすい体質の方
- 経口避妊薬(ピル)を服用中の方
- ホルモン補充療法(HRT)を受けている方
上記の方は血栓症のリスクが高まるため、原則としてトラネキサム酸の服用は避けるべきです。治療上どうしても必要な場合は、必ず医師の厳重な管理のもとで服用する必要があります。
肝臓・腎臓に疾患がある人
薬の成分は主に肝臓で代謝され、腎臓から排泄されます。そのため、これらの臓器に疾患がある方は注意が必要です。
トラネキサム酸は肝臓に負担をかけますか?
重篤な肝障害を引き起こすという報告は多くありませんが、肝臓に基礎疾患がある場合は、薬の代謝に影響が出る可能性があります。肝機能に不安がある方は、服用前に必ず医師に相談してください。
特に注意が必要なのは腎臓に疾患がある方です。腎機能が低下していると、薬の排泄が遅れて血中濃度が高まり、副作用のリスクが増大します。
妊娠中・授乳中の女性
妊娠中・授乳中の服用に関する安全性は確立されていません。治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ処方されます。自己判断での服用は絶対にやめましょう。
人工透析を受けている人
人工透析(腎不全)の方は、トラネキサム酸を服用してはいけません(禁忌)。
血中濃度が著しく上昇し、痙攣(けいれん)などの重篤な副作用が現れる危険性があります。
その他、医師の診察が必要なケース
- 高齢者の方
- 過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある方
- 現在、他の病気で治療中の方や、他の薬を服用している方
上記に当てはまる方は、自己判断で市販薬などを服用せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
トラネキサム酸の飲み合わせに注意が必要な薬
トラネキサム酸には、一緒に服用してはいけない「併用禁忌」の薬と、注意が必要な「併用注意」の薬があります。
併用禁忌の薬剤「トロンビン」
止血剤である「トロンビン」との併用は絶対にできません。
両者を併用すると、血栓が作られやすくなり、血管内で血液が固まってしまう血栓塞栓症のリスクが著しく高まります。非常に危険なため、禁忌とされています。
慎重な併用が必要な薬剤
以下の薬剤と併用する場合は、血栓形成のリスクを高める可能性があるため、医師の慎重な判断が必要です。
薬剤の種類 | 具体的な薬の例 | 注意点 |
---|---|---|
血液凝固因子製剤 | ヘモコアグラーゼなど | 大量に併用すると血栓形成傾向が強まる恐れがあります。 |
女性ホルモン剤 | 経口避妊薬(ピル)、ホルモン補充療法(HRT)など | 血栓症のリスクを増大させる可能性があるため、慎重な観察が必要です。 |
トラネキサム酸の長期服用と副作用のリスク
シミ・肝斑治療などの美容目的で、トラネキサム酸を長期間服用することがあります。
長期服用で懸念される副作用
長期服用であっても、短期の場合と同様に最も注意すべきは血栓症のリスクです。健康な方であればリスクは低いとされていますが、漫然と飲み続けるのは避けるべきです。
美容目的で長期服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、体の状態をチェックしながら続けることが重要です。
トラネキサム酸を飲み続けることによる効果の側面
医師の管理のもとで正しく服用を続ければ、肝斑の改善や美白効果が期待できます。効果を実感するにはある程度の期間が必要なため、自己判断で中断せず、医師と相談しながら治療計画を進めましょう。
トラネキサム酸の過剰摂取時の対処法
誤って薬を多く飲んでしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
トラネキサム酸を2錠飲んでしまった場合の対応
本来1回1錠のところを誤って2錠飲んでしまった、といったケースでは、直ちに重篤な副作用が起こる可能性は低いです。まずは落ち着いて、吐き気や下痢、めまいなどの初期症状がないか、ご自身の体調を注意深く観察してください。
もし、何らかの異常を感じた場合や、不安な場合は、すぐに医師や薬剤師に連絡して指示を仰ぎましょう。
正しい用法・用量を守ることの重要性
薬は、効果と安全性のバランスを考慮して用法・用量が定められています。多く飲めば効果が高まるというものではなく、むしろ副作用のリスクを高めるだけです。必ず指定された量を守ってください。
トラネキサム酸250mgの一回何錠が適切か
トラネキサム酸は、250mgや500mgといった規格があり、治療目的によって処方される量や回数が異なります。
例:
- 肝斑治療の場合: 1回250mg~500mgを1日2~3回
- 喉の痛みや口内炎の場合: 1回250mgを1日3回
市販薬にもトラネキサム酸が配合されているものがありますが、製品によって含有量や用法が異なります。必ずパッケージや説明文書を確認し、記載された用法・用量を守って服用してください。
副作用が出た場合の対処と相談先
万が一、トラネキサム酸を服用して副作用と思われる症状が出た場合は、以下の手順で対応してください。
- まずは服用を中止する
自己判断で服用を続けるのは危険です。まずは一旦、服用をやめましょう。 - 医師または薬剤師に相談する
軽いかゆみや吐き気など、軽度だと思われる症状でも、続く場合は処方を受けた医師や薬局の薬剤師に相談してください。市販薬の場合は、購入した店舗の薬剤師や登録販売者に相談することもできます。 - 重篤な症状は直ちに医療機関へ
以下の症状は血栓症のサインかもしれません。一刻も早く医療機関を受診してください。- 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない
- 胸の痛み、圧迫感、息苦しさ
- 片方の手足のしびれ、力が入らない
- ふくらはぎの痛みや腫れ、むくみ
トラネキサム酸は、正しく使えば非常に有用な薬です。しかし、副作用のリスクをゼロにすることはできません。大切なのは、自分の体質や健康状態を把握し、リスクを理解した上で、専門家である医師や薬剤師の指示に従うことです。不安な点があれば、決して自己判断せず、気軽に相談しましょう。
免責事項:
本記事は、トラネキサム酸の副作用に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスに代わるものではありません。治療や服薬に関する決定は、必ず医師や薬剤師にご相談ください。