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脂肪腫(Lipoma)|原因・症状・治療を徹底解説【医療専門ページ】

  1. 脂肪腫とは何か(定義・概要)

脂肪腫(しぼうしゅ、Lipoma)は、皮下にできる良性腫瘍のひとつで、成熟した脂肪細胞から構成されます。軟らかく可動性のあるしこりとして触知され、多くの場合、無症状で経過します。最も頻度の高い軟部組織腫瘍であり、特に中年以降の成人に多くみられます。

さらに詳しく述べると、脂肪腫は単に脂肪組織の増殖による腫瘤ではなく、その発生機序には細胞分裂の制御異常、脂肪代謝の局所的な亢進、および成長因子の関与が指摘されています。特に脂肪腫が頻発する体幹や四肢では、慢性的な摩擦や圧迫が発生因子となる可能性も示唆されています。また、脂肪腫の内部構造はしばしば線維性の被膜に包まれており、この被膜が周囲組織と明瞭に区分されている点が、悪性腫瘍との重要な鑑別点となります。MRIにおいてはT1強調画像で高信号を示し、脂肪と同等の信号を持つことから、非侵襲的な診断手段として有用です。治療方針においては、患者の生活の質(QOL)を考慮し、機能障害を伴う部位や美容的問題を抱える部位では積極的な摘出が推奨されます。

臨床的には、脂肪腫の診断は比較的容易な場合が多いものの、すべての皮下腫瘤が脂肪腫であるとは限らず、慎重な鑑別が求められます。特に脂肪肉腫などの悪性軟部腫瘍との鑑別は重要であり、急速な増大、圧痛、深部固定性といった臨床所見は警戒すべきサインです。画像診断ではMRIが最も有用とされ、脂肪腫はT1強調像で脂肪に類似した高信号を示し、T2強調像でも高信号を保ちます。しかしながら、脂肪腫様の脂肪肉腫では一部に不均一な信号や被膜の不整が見られるため、必要に応じて造影MRIや生検を追加する判断が求められます。また、手術適応については患者の主観的症状だけでなく、周囲の組織構造との関係、活動量や職業背景(例:圧迫の多い姿勢をとる業務)などを踏まえて総合的に評価されるべきです。手術後の経過も良好なことが多いですが、大きな脂肪腫や多発する症例では傷跡の管理や瘢痕形成への対応も重要です。予防的な観点では、脂肪腫そのものを予防する確立された方法は存在しないものの、身体の定期的な自己チェックや、しこりに気づいた時点で早めに専門医を受診することが推奨されます。

加えて、脂肪腫に対する臨床的なアプローチは多岐にわたり、個々の患者の症状、腫瘤の位置、サイズ、増大速度などを複合的に評価する必要があります。特に、深部筋膜下に位置する脂肪腫や、内臓器周囲に形成される深在性脂肪腫に関しては、単なる皮膚科的対応では不十分なこともあり、整形外科や外科、時には形成外科との連携が求められます。また、多発性脂肪腫症(familial multiple lipomatosis)では、疾患の遺伝的背景や生活習慣の影響も考慮し、長期的な経過観察と段階的な治療計画が必要です。近年では、脂肪腫の診断にAI画像解析やデジタルパソロジーを応用した研究も進んでおり、従来の視診・触診に加えて、画像ベースの定量的解析により、悪性化リスクのスクリーニングが可能となる日も近いと期待されています。さらに、患者への説明においては、単なる“良性のしこり”という表現に留まらず、なぜ手術を勧めるのか、放置した場合の具体的な懸念点などをわかりやすく伝えることが、医療者と患者との信頼関係構築にもつながります。これらを踏まえ、脂肪腫は単純な皮下腫瘤と捉えるのではなく、全身的・包括的な視点から診断・治療を行うことが、より質の高い医療提供につながるといえるでしょう。

  1. 発生メカニズム・病態生理

脂肪腫は脂肪細胞の過形成(過剰な増殖)によって生じます。正確な原因は不明ですが、遺伝的要因や局所的な脂肪代謝の異常が関与するとされています。通常は単発で出現しますが、遺伝性の疾患(多発性脂肪腫症)では多数の脂肪腫が全身に形成されることがあります。

  1. 原因とリスク要因

脂肪腫の明確な原因は判明していませんが、以下のような要因が関係していると考えられます:
– 年齢(40代以降に多い)
– 遺伝的素因(家族性脂肪腫症)
– 肥満との関連性は限定的
– 軽度の外傷や圧迫部位への慢性的刺激

  1. 症状と経過

ほとんどの脂肪腫は無症状で、偶然発見されます。一般的には数cm程度の軟らかいしこりとして認識され、痛みはありません。ただし、神経や筋肉などを圧迫すると圧痛や運動制限が起こることがあります。

  1. 診断方法

診断は視診と触診を基本としますが、必要に応じて以下の検査が行われます:
– 超音波検査:境界明瞭な低エコー腫瘤
– MRI検査:脂肪と同様の信号強度を示すことで診断補助
– 生検:悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に実施

  1. 鑑別診断

脂肪腫に似た軟部腫瘤は多数存在し、以下の疾患との鑑別が重要です:
– 脂肪肉腫(悪性)
– 表皮嚢腫(粉瘤)
– ガングリオン
– 神経鞘腫
特に急速に増大する腫瘤、疼痛を伴う腫瘤は慎重な評価が必要です。

  1. 治療法

無症状で小さな脂肪腫であれば経過観察も可能ですが、以下のような場合には手術による摘出が適応されます:
– 見た目が気になる(整容面)
– 圧迫症状がある
– 増大傾向がある
– 悪性の可能性が否定できない
局所麻酔下での日帰り手術が一般的です。

  1. 再発と予後

脂肪腫は良性腫瘍であり、完全に摘出すれば再発はまれです。ただし、不完全な切除や多発性脂肪腫症では再発の可能性があります。

  1. 放置によるリスク

多くの脂肪腫は良性で経過しますが、以下のようなリスクがあります:
– 徐々に大きくなり圧迫症状をきたす
– 整容面での問題
– ごくまれに脂肪肉腫との鑑別が困難なケース

  1. よくある質問(Q&A)

Q1. 脂肪腫はがんですか?
A1. いいえ。脂肪腫は良性腫瘍であり、通常は悪性化しません。

Q2. 自然に治りますか?
A2. 自然消失はまれで、多くはそのまま残ります。

Q3. 手術は痛いですか?
A3. 通常は局所麻酔下で行われ、術中の痛みはほとんどありません。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医
略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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