ハイドロキノンとは?期待できる2つの効果や副作用、トレチノインとの併用について解説
- 本コラムの内容について、当院では現時点では取り扱いがございませんが、情報のひとつとしてご利用下さい。
「ハイドロキノンってどんな効果があるの?」
「ハイドロキノンとトレチノインの併用ってどうなの?」
などとお考えではありませんか?
ハイドロキノンは、シミやニキビ跡の改善効果が期待できる薬です。塗布することでシミやニキビ跡の原因となるメラニン色素の発生を抑え、肌の美白を目指します。
このページでは、ハイドロキノンの効果と副作用をまとめました。より高い効果を期待できる、トレチノインとの併用についても解説していますので、肌トラブルでお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
目次
ハイドロキノンとは?シミを予防できる美白成分
ハイドロキノンは、主にシミの改善や予防に用いられる薬です。シミの原因となるメラニン色素の産生を阻害するはたらきがあり、美白効果が期待できます。
主成分のヒドロキノンは、イチゴ類や麦芽、コーヒーなどに含まれる天然の化合物です。海外では古くから美白効果に目が向けられ、化粧品クリームなどに使用されてきました。
日本でも2001年に薬事法が改正されて以降、ヒドロキノンを配合した化粧品が次々に販売されています。
ただし、市販の化粧品は配合濃度が低いものが多く、ハイドロキノンを低リスクで効果的に使用するためには、皮膚科医により処方された医薬品が必要です。
ハイドロキノンで改善効果が期待できる2つの症状
ハイドロキノンは、主に以下2つの症状改善に効果が期待できます。
- ニキビ跡(赤み)の色素沈着
- シミ
ハイドロキノンは、シミをはじめとした色素沈着の改善が期待できる薬です。ニキビ跡を放置すると色素沈着を起こす可能性がるので、ハイドロキノンで予防することが大切です。
ここからは、それぞれの症状を詳しく見てきましょう。
1.ニキビ跡(赤み)の色素沈着
ハイドロキノンは、ニキビ跡の改善に効果が期待できます。
赤みのあるニキビ跡を放置すると、皮膚にあるメラノサイト(色素細胞)が刺激され、メラニン色素が生成されます。メラニン色素は色素沈着を引き起こし、シミのような茶色に変色することが多いです。
ハイドロキノンはメラニン色素の生成を阻害するため、この茶色いニキビ跡を改善できる見込みがあります。ただし、同じニキビ跡でも肌がクレーター状に陥没したものには効果が見込めません。
また、進行中のニキビにはかえって症状を悪化させる可能性があるため、ハイドロキノンの使用は不向きです。
2.シミ
ハイドロキノンは、シミに対しても改善効果が期待できます。
後天的に発生するシミは、メラニン色素の生成を阻害する、ハイドロキノンのはたらきによって改善・予防が可能です。
ハイドロキノンの使用が適しているのは、主に以下の種類のシミです。
症状 | 特徴 |
---|---|
老人性色素斑 | 「日光性色素斑」とも呼ばれる、紫外線が原因のシミ。30代頃から発症し、加齢とともに悪化する傾向にある。 |
炎症性色素沈着 | 傷や火傷、虫さされの後にできるシミ。ニキビ跡にできる茶色い色素沈着も、この炎症性色素沈着の一種にあたる。 |
肝斑 | 主に頬骨のあたりに生じる左右対称のシミ。女性ホルモンの乱れが原因と考えられており、妊娠中や更年期の女性に多く見られる。 |
ただし、以下の症状には効果が見込めないか、あるいは効果が現れるまでに時間を要する可能性があります。
- そばかす
- 扁平母斑(茶あざ)
- 老人性疣贅
そばかすは遺伝的な要因が大きく、ハイドロキノンでは十分に治療できない場合があります。また、扁平母斑や老人性疣贅は、症状にもよりますが液体窒素やレーザーを使った治療が一般的です。
症状によっては他の治療方法をご提案する場合もあります。アイシークリニックでは対面診療により患者さまの状態を確認しますので、肌の悩みを抱えていらっしゃる方は一度ご相談ください。
ハイドロキノンはトレチノインと併用するとより効果的
ハイドロキノンとの併用される薬のひとつに「トレチノイン」があります。
トレチノインはビタミンAの誘導体で、塗布することで肌のターンオーバーを促進することができます。表皮の深い層にあるメラニン色素まで外に押し出し、色素沈着の改善効果が期待できる薬です。
ハイドロキノンは単体の使用だと肌への浸透率が低いですが、トレチノインと併用することで浸透効果を上げられます。
それぞれの併用は「トレチノイン・ハイドロキノン療法」とも呼ばれ、漂白期と治癒期の流れでシミの美白を目指します。
- 漂白期
トレチノインを用いてメラニン色素の排出を促進。同時にハイドロキノンの作用により、新たな色素の生成を阻害。 - 治癒期
シミが薄くなった段階でトレチノインの使用を中止。ハイドロキノンの塗布を継続しつつ、炎症の経過を観察。
トレチノインも市販の化粧品が販売されています。通販サイトでセット販売されている場合もありますが、医薬品と違って濃度が低いため注意が必要です。
ハイドロキノンによる主な2つの副作用と対処法
ハイドロキノンは濃度が高いほど強力に作用しますが、同時に副作用のリスクも大きくなります。
特に「肌の赤み」や「白斑」の症状が出やすいため、治療中はこまめに肌の状態をチェックしてください。
ここからは、それぞれの副作用の特徴と対処法について解説していきます。
主な副作用①:肌の赤みや炎症
ハイドロキノンの治療初期には、皮膚に赤みが生じたり、ヒリヒリとした違和感を覚えたりすることがあります。
原因の多くは、ハイドロキノンの強い刺激によって引き起こされる炎症です。赤みや痛みが強い場合はいったん使用を中止し、氷や保冷剤を用いて患部を冷やしましょう。
治療を続けると肌に耐性ができ、数週間を過ぎた頃から症状が徐々に引く傾向にあります。
もしも症状が何日も引かないようであれば、アレルギー反応を起こしている可能性が高いです。治療方法を見直す必要がありますので、医師の診察を受けるようにしてください。
ハイドロキノンで肌が赤くなった場合の対処法
肌の赤みやヒリヒリ感が強いときは、ハイドロキノンの塗布回数を調整してください。
ハイドロキノンは1日2回、朝・夜の洗顔後に使用するのが一般的です。副作用が強い場合は1日1回、それでも強い場合は2日に1回に減らし、症状が改善するかどうかを判断します。
使用頻度を減らしても改善が見込まれないときは、一度クリニックにご相談ください。場合によっては、ハイドロキノンの配合濃度を下げることも検討いたします。
主な副作用②:白斑
ハイドロキノンの濃度が高い、もしくは使用期間が長い場合、白斑(肌が白く色抜けすること)を引き起こす可能性があります。
これはハイドロキノンの作用でメラノサイト(色素細胞)が刺激を受けた結果、細胞自体が失われてしまうためです。
ただし、濃度5%程度までのハイドロキノンで白斑が発症したとの報告はされていません。
多くのクリニックでは、効果と副作用のバランスを考え、約4%のハイドロキノンを処方しています。また、治療が長期に及ぶときは、半年をめどに休薬期間を設けているクリニックも少なくありません。
用法用量を守って使用すれば、白斑を引き起こすリスクを抑えてハイドロキノンを使用できます。
ハイドロキノンで白斑が生じた場合の対処法
万が一、ハイドロキノンの使用により白斑が生じた場合は、内服・外用治療や紫外線治療により症状の改善を目指します。
以下は白斑(尋常性白斑)に対して用いられる主な治療方法です。
- ステロイド外用療
- 活性型ビタミンD3外用薬の使用
- タクロリムス軟膏の使用
- PUVA療法
- ナローバンドUVB照射療法
(参考:白斑|公益社団法人 日本皮膚科学会)
中でも、ステロイド外用療は日本皮膚科学会でも推奨度の高い治療法です。白斑の治療にステロイド外用は有効であると考えられています。
また、ビタミンD3外用薬やPUVA療法などを併用して治療を目指す方法もあります。
副作用でシミが濃くなることがある?紫外線に注意!
ハイドロキノンの使用によってシミが濃くなる可能性はあります。
本来、メラニン色素には紫外線を吸収する大切な役割があります。ハイドロキノンの塗布によりメラニン色素が失われた状態は、紫外線に対して無防備な状態と言えます。
紫外線によりかえって患部のシミが濃くなる可能性もあるため、ハイドロキノンの使用中は日焼け止めクリームなどを併用し、紫外線対策に努めることが大切です。
また、使用する日焼け止めクリームは、日やけする時間を遅らせる「SPF20以上」がおすすめです。
ハイドロキノンの副作用でガンになることはある?濃度に注意!
その他の副作用として、5%濃度のハイドロキノンには動物実験により発がん性が疑われています。
現段階でヒトに対する発がん性は判断されていませんが、クリニックでは医師の指導のもと、濃度4%以下でハイドロキノンを処方するのが一般的です。
用法用量を守って使用すれば、副作用でがんになるリスクは低いとお考えください。
ハイドロキノンの発がん性については、次の項目で詳しく解説します。
5パーセント濃度のハイドロキノンには発がん性が指摘されている
マウスやラットを用いた動物実験では、5%濃度のハイドロキノンに肝臓・腎臓腫瘍の発生が認められています。
ただし、ヒトでは発がん性の因果関係が判明しておらず、国際機関による評価でも未分類とされている状況です。
たとえば、国際がん研究機関のIARCは「人に対する発がん性については分類できない物質」としています。また、日本産業衛生学会は「発がん性について評価されていない」と評価しています。
(参考:有害性評価書 ヒドロキノン|独立行政法人 製品評価技術基盤機構)
ハイドロキノンとがんとの関係は不明であるものの、このことから、クリニックではハイドロキノンの配合量を5%未満に抑えています。
【市販品には注意】ハイドロキノンクリームはクリニックで処方を受けよう!
ハイドロキノンを試したい方は、クリニックで処方を受けることを推奨します。
ドラッグストアなどの薬局、Amazonなどの通販を利用して、市販品のハイドロキノンクリームを購入することができます。しかし、市販品におけるハイドロキノンの濃度は保証されていません。
ハイドロキノンは刺激性が強いため、濃度が高すぎると炎症や白斑といった副作用を引き起す可能性があります。
反対に、濃度が低すぎると十分な効果を得られず、かえって肌トラブルを長引かせてしまいます。
副作用のリスクを避け、より肌トラブルの改善を目指すなら、クリニックで処方されたハイドロキノンを使用しましょう。
デリケートゾーンにも使える?ハイドロキノンクリームの使い方・塗り方
ハイドロキノンクリームは、次の流れで肌へ塗ります。
- 洗顔を行ってから、顔全体を化粧水で整える
- トレチノインを併用する場合は、患部にのみスポットで塗る
- トレチノインの浸透後、ハイドロキノンを患部より広めに塗る
- 日焼け止めを塗る
その他、必要に応じて美容液による保湿や飲む日焼け止めの服用もしましょう。
なお、ハイドロキノンはデリケートゾーンの黒ずみ対策にも用いられます。ただし、粘膜に刺激を与える可能性があるため、デリケートゾーンに使用する際は医師による指導のもと使用してください。
ハイドロキノンクリームの治療期間
ハイドロキノンクリームの治療期間はおおむね2~3ヶ月です。
ハイドロキノンはトレチノインとの併用が推奨されます。一般的なシミの場合、次のような治療経過をたどることが多いです。
治療開始からの期間 | 治療内容 |
---|---|
1ヶ月〜1.5ヶ月 | トレチノイン・ハイドロキノンを併用する |
2ヶ月〜3ヶ月 | ハイドロキノンのみを使用する |
3ヶ月〜4.5ヶ月 | 休薬期間 |
このように、ハイドロキノンとトレチノインを併用する場合、1〜1ヶ月半のサイクルで治療を行います。
肝斑はシミよりも治療が長期化するため、いったん休薬期間をはさみ2周目、3周目と継続するケースも珍しくありません。
多くの場合、肌トラブルが改善した後も、再発を防ぐためにハイドロキノンの塗布を継続します。
ハイドロキノンの処方は医療機関へ
ハイドロキノンは、シミやニキビ跡などの治療に用いられる医薬品です。症状の原因となるメラニン色素の産生を抑えることで、肌の美白を目指します。
ハイドロキノンは刺激性が強いため、経過を見ながら治療を進めることが大切です。