十全大補湯とは?期待できる4つの効果や副作用、他の漢方薬との違いを解説
- 本コラムの内容について、当院では現時点では取り扱いがございませんが、情報のひとつとしてご利用下さい。
「十全大補湯にはどんな効果がある?」
「十全大補湯と補中益気湯の違いは?」
などとお悩みではありませんか。
十全大補湯は元気がない方の気力と体力を補う働きがある漢方薬です。気力がわかないうつ状態や体力が落ちている状態などに用いられ、免疫力を高める効果も期待できます。
このページでは十全大補湯の成分や期待できる効果、腹斜王、補中益気湯と人参養栄湯との違いについて解説します。十全大補湯が自分の悩みに合うか知りたい方はぜひご一読ください。
目次
十全大補湯とは?気力と体力を補う漢方薬
十全大補湯とは気力と体力を補う漢方薬です。不足を補う「補剤」の一つです。
貧血や栄養不良など衰弱している体を改善する働きがあります。低血圧の方や乾燥肌の方にも用いられ、全身の状態を改善して体力をつけるために活用されます。
ここからは、十全大補湯の成分や適している方の具体例について解説します。
十全大補湯の成分は?配合生薬と分量
十全大補湯の成分として配合されている生薬は、以下の通りです。
- 人参(ニンジン):1.5g
- 黄耆(オウギ):1.5g
- 桂皮(ケイヒ):1.5g
- 地黄(ジオウ):1.5g
- 芍薬(シャクヤク):1.5g
- 川芎(センキュウ):1.5g
- 当帰(トウキ):1.5g
- 茯苓(ブクリョウ):1.5g
- 白朮(ビャクジュツ):1.5g
- 甘草(カンゾウ):0.75g
※十全大補湯エキス錠クラシエ
使われている生薬のうち人参は強壮剤として用いられ、桂皮は胃腸を改善する薬です。芍薬は婦人科系の症状に用いる薬としても知られています。
十全大補湯が適している方 | 虚弱体質で貧血やめまいでお悩みの方
十全大補湯が適している方は、以下の通りです。
- 虚弱体質の方
- 貧血やめまいでお悩みの方
- 胃腸が弱い方
- 食欲がない方
- 手足の冷えで困っている方
- 病後や産後などで衰弱している方
十全大補湯は軽い作業をするとすぐに疲れてしまい、横になると眠ってしまう状態の方に適した漢方薬となっています。
十全大補湯の効き目がすごい?期待できる4つの効果効能
十全大補湯は大きく以下の4つの効果効能が期待できます。
- 抗うつ剤の効果を補う
- 癌治療の補助・癌の再発予防
- アトピー性皮膚炎の症状緩和
- 更年期障害を改善(自律神経失調症や不眠など)
免疫力を高める作用で風邪や新型コロナウイルスに備えるために使われる場合もあります。
そのほか、ストレスでイライラしている方や乾燥肌で生理痛やPMSを改善したい方などにも十全大補湯はおすすめです。
ここからは、それぞれの効果や効能、痩せる効果があるのかどうか解説します。
効果効能①抗うつ剤の効果を補う
十全大補湯には、抗うつ剤と併用することで効果を補う働きがあります。
軽症のうつ病の場合、「気虚」と呼ばれる意欲低下や疲労感といった症状が現れます。十全大補湯は漢方における「気」と「血」を補うことで、だるさや意欲の低下を改善へと導くことが可能です。
そのため、抗うつ剤とあわせて「補気剤」として十全大補湯が用いられます。
なお、仮に抗うつ剤を服用して副作用が出た場合、五苓散などその他の漢方薬が用いられることもあります。
効果効能②癌治療の補助・癌の再発予防
十全大補湯は癌(がん)治療の補助・癌の再発予防にも使われる漢方薬です。
細菌への感染を防ぐ役割を持つ「マクロファージ」を活性化させる作用があるため、抗腫瘍効果が期待できます。免疫力を高める作用もあるので、癌の再発を予防する用途で活用可能です。
また、十全大補湯は治療で衰弱した体力・気力を補うだけでなく、抗がん剤治療や放射線治療の副作用軽減のために用いられることもあります。骨髄抑制や食欲不振などの副作用を緩和させることが可能です。
効果効能③アトピー性皮膚炎の症状緩和
十全大補湯は、アトピー性皮膚炎の症状緩和にも活用されます。
特に赤みがあり、皮膚の修復が遅い状態に対して用いられることが多いです。皮膚に栄養がなく、ただれた部分から汁が止まっていない状態の方に活用されます。
十全大補湯のほかに、千金内托散や帰耆建中湯などの漢方も活用可能です。
しかし、かゆみや炎症が強いアトピー性皮膚炎に対しては状態を悪化させるリスクがあるため注意が必要となります。
効果効能④更年期障害を改善(自律神経失調症や不眠など)
十全大補湯には更年期障害を改善する働きもあります。
更年期障害は年齢によって卵巣ホルモンの分泌が減少することで起こる障害で、ホルモンバランスの乱れによる体の不調が現れます。
たとえば、自律神経失調症や不眠を伴うめまいは更年期障害の症状の一つです。
十全大補湯には元気をつける「人参」が配合されているので、更年期障害のだるさや風邪の引きやすい状態を改善する効果が期待できます。
十全大補湯は新型コロナウイルスの対策になる?免疫力は高まる
十全大補湯は免疫力を高める作用があります。
そのため、日本感染症学会にて新型コロナウイルス感染症の予防に対して、漢方製剤の効果が期待されています。
そのほか、風邪を引きやすい方の体質改善にも役立ちやすいです。
十全大補湯は痩せる?代謝を上げる作用がある
十全大補湯には直接的に痩せる効果は期待できません。しかし代謝を上げる作用があります。
十全大補湯によって血液を巡らせることで低体温や冷え性を改善でき、痩せにくい体質を改善可能です。
冷え性と代謝の悪さに悩んでいる方の場合、代謝アップによって痩せる可能性はあります。
十全大補湯の副作用 | 下痢やむくみなどがある
十全大補湯には、以下のような副作用もあるため注意が必要です。
- 発疹
- かゆみ
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 蕁麻疹
- 胃の不快感
副作用が気になった時には医師や薬剤師、担当販売者などに相談をしましょう。
また、まれに偽アルドステロン症や肝機能障害などの副作用が起こることもあります。
偽アルドステロン症は顔や手足にむくみが発生する、手がこわばるといった症状が出るのが特徴的です。重い副作用が出た場合は服用を中止し、医師に診てもらいましょう。
十全大補湯で太ることはある?食欲促進の作用に注意
十全大補湯で食欲が促進されることで、太る可能性はあります。
十全大補湯は食欲が出ず元気がない状態の方に適した漢方です。十全大補湯を使用することで食事量が増え、結果として体重が増えることがあります。
十全大補湯はダイエットをしたい方よりも、食が細いことでうまく太ることができない方におすすめです。
また、食欲を促進させたい時には十全大補湯のほかに、六君子湯や補中益気湯が用いられることもあります。
十全大補湯に注意点はある?不安感による不眠でお悩みの方には不向き
十全大補湯は主に栄養状態が悪い状態や、肉体的な不調に対して使用されます。
そのため精神的な不安感や、悲しい気持ちになるなど「心血虚」が原因の不眠には不向きです。
不安な気持ちから来る不眠に対しては、十全大補湯と同じ種類の気血双補剤のうち、「帰脾湯」や「加味帰脾湯」がおすすめです。
帰脾湯は貧血気味で不安感が強い方に、また加味帰脾湯はのぼせやイライラが特徴的な方に向いています。
十全大補湯の正しい飲み方
十全大補湯は1日2〜3回、食前や食間に水または白湯で服用するのが正しい飲み方です。
ツムラとクラシエの十全大補湯の場合、用法用量は以下のようになります。
メーカー | ツムラ | クラシエ |
---|---|---|
名称 | ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用) | 十全大補湯エキス錠クラシエ |
1回あたりの服用量 | ・成人は7.5gを2~3回に分割して服用 | ・7歳未満5歳以上は2錠 ・15歳未満7歳以上は3錠 ・15歳以上は4錠 |
また、ツムラの十全大補湯は年齢に応じて服用量を調整する必要があり、クラシエの十全大補湯の場合、5歳未満は服用を避けることが推奨されています。
また十全大補湯には顆粒剤や錠剤のほかに煎じ薬もあります。土瓶やなべ、やかんなどに入れて煎じることで漢方に含まれる成分をより素早く吸収できるのが特徴です。
煎じ薬の場合も1日3回に分けて空腹時に服用するのが正しい飲み方となります。
十全大補湯は薬局や通販で買える?ツムラやクラシエの市販品が買える
十全大補湯は薬局や通販でツムラやクラシエの市販品を買うことが可能です。
具体的には、以下のような製品が取り扱われています。
- 錠剤十全大補湯350錠(一元製薬)
- 十全大補湯エキス錠クラシエ180錠(クラシエ)
- 十味敗毒湯エキス顆粒48包(ツムラ漢方)
- 十全大補湯エキス錠N260錠(JPS)
- 十全大補湯エキス細粒G84包(コタロー)
十全大補湯を初めて服用する時には、薬剤師や医師に相談してからドラッグストアなどで購入するのがおすすめです。
十全大補湯と補中益気湯や人参養栄湯の違い
十全大補湯と補中益気湯や人参養栄湯には、以下のような違いがあります。
名称 | 十全大補湯 | 補中益気湯 | 人参養栄湯 |
---|---|---|---|
成分 | 黄耆・桂皮・地黄・芍薬・白朮・川芎・当帰・人参・茯苓・甘草 | 人参・蒼朮・黄耆・当帰・陳皮・大棗・柴胡・甘草・生姜・升麻 | 人参・当帰・芍薬・地黄・白朮・茯苓・桂皮・黄耆・陳皮・遠志・五味子・甘草 |
効果効能 | ・気力や体力を補う ・貧血や食欲不振、手足の冷えの改善 など |
・気力や体力を補う ・胃腸の消化機能や吸収機能の改善 など |
・体力が低下している状態を改善 ・貧血や食欲不振、手足の冷えの改善 など |
対象者 | ・虚弱体質の方 ・貧血やめまいでお悩みの方 ・胃腸が弱い方 など |
・疲れやすい方 ・胃腸が弱い方 ・気力がわかない方 など |
・虚弱体質の方 ・貧血の方 ・心身疲労(気虚)の方 など |
特徴 | 地黄が含まれているため消化器の機能が低下している人は飲みにくさを感じる | 十全大補湯と比べて飲みやすい | 慢性的な疲労や精神的な症状の改善に用いられる |
十全大補湯と補中益気湯は、どちらも気力や体力を補う漢方薬です。基本的な効果効能は大きく変わりません。
十全大補湯には有効成分「地黄」が含まれているため、消化器の機能が低下している場合は飲みにくさを感じることがあります。
また人参養栄湯は十全大補湯のように衰弱した状態に働きかけますが、精神的な症状の改善にも使われるのが特徴的です。
補中益気湯について詳しく知りたい方は以下のページをあわせてご覧ください。
補中益気湯は元気を補う漢方薬 | 期待できる6つの効果や副作用、注意点を解説
十全大補湯は衰弱した体に元気を与える漢方薬
十全大補湯は衰弱した体に元気を与える漢方薬です。具体的には、以下のような効能が期待できます。
- 抗うつ剤の効果を補う
- 癌治療の補助・癌の再発予防
- アトピー性皮膚炎の症状緩和
- 更年期障害を改善
- 自律神経失調症や不眠などを改善
十全大補湯は体力がない方や気力がわかない方のうち、衰弱している状態に適した漢方薬です。冷え性や疲れやすさなど虚弱体質にお悩みの方は、十全大補湯の服用をご検討ください。