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「不眠が治らない」は本当?原因と改善・治療法を専門家が解説

「不眠が治らない」という深い悩みを抱えていませんか?
毎晩、眠りにつけない、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早く目が覚めてしまう…。
そんな辛い日々が続くと、「もう一生このままなのではないか」と絶望的な気持ちになってしまうこともあるでしょう。
しかし、不眠は適切な対処や治療によって改善・完治を目指せる病気です。「治らない」と諦める必要はありません。

この記事では、「不眠が治らない」と感じる理由、慢性不眠の様々な原因、そして自力でできる対策から医療機関での専門的な治療法まで、専門家の視点から詳しく解説します。諦める前に、ぜひこの記事を読んで、改善への一歩を踏み出すヒントを見つけてください。

目次

なぜ不眠は治らないと感じるのか?慢性不眠の原因を探る

「不眠が治らない」と感じる背景には、一時的な不眠ではなく、より複雑で慢性的な要因が関わっていることがほとんどです。ここでは、なぜ不眠が長引いてしまうのか、その主な原因について掘り下げていきます。

慢性不眠の主な種類と診断基準

不眠症は、国際的な診断基準(例えば、DSM-5やICSD-3など)に基づいて診断されます。一般的に慢性不眠症と診断されるのは、週に3日以上3ヶ月以上にわたって以下のいずれかの症状が続き、それによって日中の活動に支障が出ている場合です。不眠症に関するより詳しい情報や診断基準については、厚生労働省のe-ヘルスネット日本大学医学部附属板橋病院の医療情報検索なども参考になります。

  • 入眠困難: 寝床に入ってから眠りにつくまでに時間がかかる(目安として30分以上)。
  • 中途覚醒: 夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか眠れない。
  • 早朝覚醒: 希望する時間よりもかなり早く目が覚めてしまい、その後眠れない。
  • 熟眠障害: 睡眠時間は十分なのに、「眠った感じがしない」「ぐっすり眠れていない」と感じる。

これらの症状が組み合わさって現れることも珍しくありません。「不眠が治らない」と感じている方は、この慢性不眠症の状態にある可能性が高いと言えるでしょう。

不眠が治らないと感じる背景:複数の原因が絡み合う可能性

不眠は、たった一つの原因だけで起こることは少なく、複数の要因が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。そのため、一つの原因だけに対処しても改善が見られず、「治らない」と感じてしまうことがあります。主な原因を以下に挙げます。

ストレスや精神的な要因(うつ病、不安障害など)

精神的な要因は、不眠の最も一般的な原因の一つです。

  • ストレス: 仕事、人間関係、家庭環境など、様々なストレスは自律神経のバランスを乱し、心身を緊張状態に保ちます。これにより、リラックスして眠りにつくことが難しくなります。ストレスが長く続くと、不眠も慢性化しやすくなります。
  • うつ病: うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、不眠が高頻度で現れる症状です。特に早朝覚醒はうつ病に特徴的な不眠症状の一つとされています。
  • 不安障害: 将来への不安、健康不安、漠然とした恐れなどが持続的にあると、入眠困難や中途覚醒を引き起こしやすくなります。「眠れないことへの不安」自体が不眠を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
  • その他の精神疾患: パニック障害、強迫性障害、統合失調症なども不眠を伴うことがあります。

これらの精神的な問題は、単に「気のせい」ではなく、脳の機能や神経伝達物質のバランスの変化が関わっています。そのため、不眠を改善するには、根本的な精神的な問題への対処も同時に行う必要があります。

生活習慣の乱れ(食生活、運動不足、寝室環境など)

現代社会では、私たちの生活習慣が睡眠を妨げやすい方向に傾きがちです。

  • 不規則な生活リズム: 毎日寝る時間や起きる時間が大きく変動すると、体内時計が狂い、自然な眠りを妨げます。週末の寝だめなどもリズムを崩す原因になります。
  • 寝る直前のカフェインやアルコール摂取: カフェインには覚醒作用があり、アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠を浅くし、夜中に目が覚めやすくなります。
  • 寝る前の喫煙: ニコチンには覚醒作用があります。
  • 寝る前の強い光(スマホ、PCなど): スマートフォンやパソコンのブルーライトは脳を覚醒させ、眠りを妨げます。
  • 運動不足: 適度な運動は快眠を促しますが、運動不足はエネルギー消費が少なく、寝つきが悪くなることがあります。逆に、寝る直前の激しい運動も交感神経を刺激して眠りを妨げます。
  • 不適切な寝室環境: 寝室が明るすぎる、騒がしい、温度や湿度が適切でない(一般的に、室温は20℃前後、湿度は50%前後が快適とされています)と、快適な睡眠が得られません。
  • 寝床での過ごし方: 寝床で考え事をしたり、スマホを見たり、本を読んだりするなど、眠る以外の活動をすると、「寝床=眠る場所」という関連付けが弱まり、寝つきが悪くなることがあります(刺激制御の失敗)。
  • 食生活: 寝る直前の脂っこい食事や、空腹すぎることなども眠りを妨げることがあります。

身体的な病気や服用中の薬

不眠は、様々な身体的な病気の症状として現れることがあります。

  • 痛みやかゆみを伴う病気: 関節リウマチ、神経痛、アトピー性皮膚炎など。痛みやかゆみで夜中に目が覚めてしまうことがあります。
  • 呼吸器系の病気: 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることで、睡眠が中断され、熟眠感が得られません。夜間頻尿も睡眠を妨げます。
  • 循環器系の病気: 心不全や狭心症など。
  • 消化器系の病気: 逆流性食道炎など。
  • 内分泌系の病気: 甲状腺機能亢進症など。
  • レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群): 寝床に入ると脚に不快な感覚(むずむず、虫が這うような感じなど)が生じ、脚を動かしたくなる病気で、入眠困難の原因となります。
  • 服用中の薬: 一部の高血圧治療薬、ステロイド薬、抗うつ薬、気管支拡張薬などは、副作用として不眠を引き起こすことがあります。市販の風邪薬やアレルギー薬に含まれる成分も眠気を妨げることがあります。

加齢や性別による影響

  • 加齢: 高齢になると、若い頃に比べて必要な睡眠時間が短くなる傾向があり、睡眠も浅くなります。中途覚醒や早朝覚醒が増えやすくなります。これは生理的な変化であり、必ずしも病的な不眠とは限りませんが、それに伴う悩みは生じやすくなります。
  • 性別: 女性は、月経周期や妊娠、更年期など、ホルモンバランスの変化によって不眠を経験しやすい傾向があります。特に更年期には、ほてり(ホットフラッシュ)や気分の変動などと共に不眠が悪化することがあります。男性は、加齢に伴い睡眠時無呼吸症候群や前立腺肥大による夜間頻尿などが不眠の原因となることがあります。

不眠は本当に一生治らない?改善・完治の可能性

「不眠が治らない」と感じている方にとって、最も気になるのは「この状態が一生続くのか?」という点でしょう。結論から言うと、不眠症は適切な治療や対策によって改善・完治を目指せる病気です。「治らない」と諦める必要はありません。

不眠症は適切な治療で改善・完治を目指せる病気

不眠症は、風邪のように短期間で治るものではなく、原因も複雑なため、治療には時間がかかることがあります。しかし、医学的なアプローチや生活習慣の見直しを継続することで、多くの人が睡眠の質を改善し、不眠の悩みを克服しています。

重要なのは、不眠の原因を正しく理解し、その原因に応じた適切な対策や治療を行うことです。自己判断で誤った方法を試したり、漫然と市販薬に頼ったりするだけでは、根本的な解決には至らない可能性があります。

不眠症が突然治るケースもあるのか?

「不眠症が突然治った」という話を聞くこともあります。これは、不眠の主な原因となっていた状況が劇的に変化した場合に起こり得ます。例えば、

  • 長期間悩まされていたストレスの原因(仕事の異動、問題の解決など)が解消された。
  • 不眠の原因となっていた身体的な病気が治癒した。
  • 引っ越しなどで睡眠環境が劇的に改善した。
  • 心理的な負担が軽減された。

しかし、慢性化した不眠症の場合、単なる偶然や自然治癒に頼るのではなく、意識的な努力と専門的なサポートが改善への近道となることが多いです。

不眠症が治った人の体験談に見る共通点

不眠症を克服した人たちの体験談には、いくつかの共通点が見られます。

  • 「治らない」と諦めず、改善を信じて行動した: ポジティブな姿勢で不眠と向き合ったことが、治療へのモチベーション維持につながっています。
  • 不眠の原因を特定しようと努めた: 自分の不眠が何によって引き起こされているのかを知る努力をしました。
  • 専門家(医師やカウンセラー)に相談した: 自己判断ではなく、専門家の助言や治療計画に従いました。特に、不眠に詳しい医師(睡眠専門医など)や、認知行動療法に習熟した専門家との出会いが転機となることが多いです。
  • 生活習慣の見直しを徹底した: 睡眠リズム、食事、運動、寝る前の習慣、寝室環境など、基本的な生活習慣を改善するために継続的な努力をしました。
  • 完璧を目指さず、少しずつの変化を受け入れた: 一夜にして不眠が解消されるわけではないことを理解し、日々の小さな改善を積み重ねました。
  • 不眠への「とらわれ」を手放した: 「眠らなければならない」というプレッシャーや、眠れなかったことへの過度な不安を手放し、リラックスして睡眠に向かう姿勢を身につけました。特に、認知行動療法(CBT-I)はこの「とらわれ」を軽減するのに非常に有効です。

これらの共通点からわかるのは、不眠症の改善には、原因の特定、専門家のサポート、そして患者さん自身の主体的な取り組みが不可欠であるということです。

治らない不眠への具体的な対策:セルフケアと専門的治療

「不眠が治らない」状況を改善するためには、自分でできるセルフケアと、医療機関での専門的な治療の両面からアプローチすることが効果的です。

まず試したいセルフケア・生活習慣の改善策

医療機関を受診する前に、あるいは治療と並行して、まずは日々の生活習慣を見直してみましょう。これだけでも不眠が大きく改善することがあります。

睡眠環境の見直し

快適な睡眠のためには、寝室の環境を整えることが非常に重要です。

  • 光: 寝室はできるだけ暗くしましょう。遮光カーテンを使ったり、夜間の照明を最小限にしたりします。寝る直前のスマートフォンの使用は避けます。
  • 音: 静かで落ち着ける環境を作りましょう。必要であれば耳栓を使ったり、ホワイトノイズ(環境音)を活用したりするのも効果的です。
  • 温度と湿度: 一般的に、室温は20℃前後、湿度は50%前後が快適な睡眠に適しているとされています。季節に応じてエアコンや加湿器などで調整しましょう。
  • 寝具: 自分に合ったマットレス、枕、掛け布団を選びましょう。体圧分散性や通気性、保温性などが快適な睡眠につながります。

睡眠リズムの整え方

体内時計を整えることは、自然な眠りを回復させる上で最も基本的かつ重要なステップです。

  • 毎日同じ時間に起きる: 休日も平日と同じか、1時間程度の差に留めましょう。体内時計をリセットするために、起きたらすぐに日光を浴びるのが効果的です。
  • 寝る時間にとらわれすぎない: 眠くなってから寝床に入りましょう。「〇時にならなければ寝てはいけない」と考える必要はありません。
  • 寝床にいる時間を制限する: 眠れないまま長時間寝床にいると、「寝床=眠れない苦痛な場所」と脳が関連付けてしまい、さらに眠れなくなります。眠れないときは一度寝床から出て、リラックスできることをして、眠気を感じたら再び寝床に戻るようにしましょう。これは「睡眠制限法」という治療法のエッセンスでもあります。
  • 昼寝は短時間にするか避ける: 長時間の昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に影響します。どうしても眠い場合は、20~30分程度の短い昼寝に留めましょう。

食事や運動の工夫

日中の活動や食事も、夜の睡眠に影響を与えます。

  • 寝る前のカフェインやアルコールを避ける: 就寝前数時間(少なくとも4時間前)は、コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物や、アルコールの摂取を控えましょう。
  • 寝る直前の食事を避ける: 就寝直前の食事は消化活動を活発にし、眠りを妨げることがあります。夕食は寝る3時間前までに済ませるのが理想です。
  • 空腹すぎないようにする: 空腹すぎると目が覚めてしまうこともあります。軽く温かい飲み物(カフェインの入っていないハーブティーなど)を飲んだり、消化の良い軽食を少量摂ったりするのは良いでしょう。
  • 適度な運動: 日中に適度な運動をすることは、夜の快眠につながります。ウォーキング、ジョギング、水泳など、自分が楽しめる運動を習慣にしましょう。ただし、寝る直前の激しい運動は避け、就寝の3時間前までには終えるようにしましょう。

リラクゼーション法

心身の緊張を和らげることで、スムーズに眠りにつけるようになります。

  • ぬるめのお風呂: 就寝1~2時間前に38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かると、体温が一旦上がり、その後下がる過程で眠気を誘います。
  • ストレッチや軽いヨガ: 体の緊張をほぐすことでリラックスできます。
  • 腹式呼吸や瞑想: ゆっくりとした深い呼吸や、今この瞬間に意識を向ける瞑想は、心のざわつきを抑えるのに役立ちます。
  • 音楽やアロマ: ヒーリングミュージックを聴いたり、ラベンダーなどのリラックス効果のあるアロマを焚いたりするのも良いでしょう。
  • 読書: 心を落ち着かせるような内容の読書(ただし、刺激的な内容や電子書籍は避ける)も効果的です。

医療機関での専門的な不眠治療

セルフケアだけでは改善が難しい慢性不眠症には、医療機関での専門的な治療が有効です。医師は不眠の原因を詳しく調べ、その人に合った治療法を提案してくれます。

睡眠薬による治療(メリット・デメリット)

睡眠薬は、比較的早く効果が現れるため、不眠による苦痛を軽減するのに役立ちます。特に、一時的に不眠が悪化している場合や、他の治療法がすぐに効果を出しにくい場合に用いられます。

  • メリット:
    即効性があり、服用すればその日の夜から眠りやすくなる。
    不眠による疲労や日中の機能障害を軽減できる。
  • デメリット:
    不眠の根本原因を解決するわけではない
    依存性や耐性(同じ量では効きにくくなること)が生じる可能性がある。
    副作用(眠気の持ち越し、ふらつき、記憶障害など)のリスクがある。
    中止する際に反跳性不眠(一時的に不眠が悪化すること)が起こる可能性がある。

近年では、依存性や副作用が比較的少ない新しいタイプの睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬など)も登場しており、医師は患者さんの状態に合わせて適切な薬を選択します。睡眠薬に対して過度な恐怖心を持つ方もいますが、医師の指導の下で適切に使用すれば、不眠の悪循環を断ち切る有効な手段となり得ます。不安な点は医師にしっかり相談しましょう。

認知行動療法(CBT-I)

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)は、慢性不眠症に対する非薬物療法の代表格であり、不眠の根本的な改善に非常に高い効果があることが多くの研究で示されています。睡眠薬とは異なり、効果が持続しやすいというメリットがあります。

CBT-Iでは、不眠を引き起こしている誤った考え方(認知)不適切な行動に焦点を当て、それらを修正していくことで、健康的な睡眠パターンを取り戻すことを目指します。専門家(医師、心理士など)と共に、通常5回から8回程度のセッションを行います。

主な構成要素:

  • 睡眠衛生教育: 適切な睡眠習慣についての基本的な知識を学びます。
  • 刺激制御法: 寝床と眠ることを強く関連付けるための方法(例:眠気を感じてから寝床に入る、眠れないときは寝床から出る、寝床で眠る以外のことをしない)。
  • 睡眠制限法: 眠れないのに長時間寝床にいる時間を減らし、眠っている時間を凝縮することで、睡眠効率を高めます。最初は短時間から始め、徐々に寝床にいる時間を増やしていきます。
  • 認知再構成法: 不眠に関する非合理的な考え方(例:「8時間寝ないと健康を害する」「少しも眠れなかった」)を特定し、より現実的で役立つ考え方に修正します。
  • リラクゼーション法: 筋弛緩法や腹式呼吸など、心身の緊張を和らげる方法を学びます。

CBT-Iは、睡眠薬のようにすぐに効果が出るわけではありませんが、不眠に対する対処能力を身につけ、薬に頼らずに眠れるようになることを目指す治療法です。不眠が長引いている方には、非常に推奨される治療法と言えます。

その他の治療法

  • 光療法: 体内時計の乱れが原因となっている不眠(概日リズム睡眠障害)に対して、特定の波長の光を浴びることで体内時計を調整する治療法です。
  • 併存疾患の治療: 不眠の原因となっている身体的・精神的な病気がある場合は、その病気の治療を優先的に行います。
  • 精神療法・カウンセリング: ストレスや心理的な問題が不眠の原因となっている場合、根本的な問題への対処として有効です。

睡眠薬 vs 認知行動療法

不眠治療における睡眠薬とCBT-Iの主な違いを以下にまとめます。どちらが適しているかは、不眠の種類、重症度、原因、患者さんの希望などによって異なります。両方を併用することもあります。

項目 睡眠薬 認知行動療法(CBT-I)
効果の発現 早い(通常、服用したその晩から) 時間がかかる(数週間~数ヶ月)
効果の持続性 服用している間のみ(中断すると戻ることがある) 治療終了後も効果が持続しやすい
根本治療 根本原因の解決にはならない 不眠を引き起こす考え方や行動を修正し、根本改善を目指す
依存性 一部の種類で依存性や耐性のリスクがある 依存性はない
副作用 眠気の持ち越し、ふらつき、記憶障害など ほとんどない
治療対象 急性不眠、慢性不眠の一時的な症状緩和など 慢性不眠症に特に推奨される
費用の目安 薬代(保険適用あり) セッション料(医療機関や提供者による、保険適用外の場合あり)

不眠とうつ病が併発している場合の治療

不眠症とうつ病は非常に関連が深く、多くの場合同時に存在します(双極性障害などの可能性も考慮されます)。「不眠が治らない」背景にうつ病が隠れていることは珍しくありません。

この場合、不眠とうつ病の両方に対する治療を同時に行うことが重要です。うつ病の治療(抗うつ薬、精神療法など)が進むと、不眠も改善することが多いです。逆に、不眠が改善することで、うつ病の症状も軽くなることがあります。

医師は、不眠の症状だけでなく、気分の落ち込み、意欲の低下、全身倦怠感、食欲不振など、うつ病の症状についても詳しく問診し、適切な治療計画を立てます。不眠が長引き、気分の落ち込みなどが伴う場合は、うつ病の可能性も視野に入れて専門医に相談することが大切です。

治らない不眠で悩んだら:受診を検討すべきケースと相談先

「不眠が治らない」と一人で悩んでいるなら、専門家に相談することを強くお勧めします。どのような場合に受診を検討すべきか、そしてどこに相談すれば良いのかを解説します。

医療機関(精神科、心療内科、睡眠外来など)を受診する目安

以下のような場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

  • 不眠の症状が1ヶ月以上続き、週に3日以上ある場合。
  • 不眠によって日中の活動(仕事、学業、家事など)に支障が出ている場合(集中力低下、判断力の低下、イライラ、疲労感など)。
  • セルフケアを試しても改善が見られない場合。
  • 不眠だけでなく、気分の落ち込み、強い不安、意欲の低下などの精神的な症状が伴う場合。
  • いびき、睡眠中の呼吸停止、脚の不快な症状などが疑われる場合。
  • 不眠の原因が分からない場合。
  • 睡眠薬を使っているが、効果がない、副作用が気になる、やめたいがやめられない場合。

どの科を受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。不眠の原因に応じて、適切な専門医を紹介してもらえることがあります。

  • 精神科・心療内科: ストレスやうつ病、不安障害など、精神的な要因が不眠の原因として疑われる場合に適しています。
  • 睡眠外来: 不眠を含む様々な睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、概日リズム睡眠障害など)を専門的に診る医療機関です。睡眠ポリグラフ検査などの精密検査が可能な場合もあります。
  • 内科: 身体的な病気が不眠の原因となっている可能性がある場合に相談できます。

医師に伝えるべきこと

診察時には、医師に以下の情報をできるだけ具体的に伝えましょう。診断や治療計画を立てる上で非常に役立ちます。

  • 不眠の具体的な症状: どんな種類の不眠か(寝つきが悪い、夜中に目が覚める、早く目が覚める、眠りが浅い)、いつから始まったか、週に何回くらい起こるか。
  • 不眠による日中の影響: 眠れないことで日中どのような困りごとがあるか(眠気、集中力低下、イライラ、体のだるさなど)。
  • 睡眠習慣: 毎日何時頃に寝て、何時頃に起きているか。寝床に入ってから眠るまでの時間、夜中に目が覚める回数と時間、朝起きる時間、総睡眠時間。昼寝をするか、するならいつ、どのくらいの時間か。
  • 生活習慣: 食事(特に寝る前のカフェイン、アルコール、夜食)、運動習慣、喫煙習慣。寝る前にしていること(スマホ、入浴、読書など)。
  • 睡眠環境: 寝室の明るさ、音、温度、湿度。
  • ストレスや悩み: 現在抱えているストレスや、気になっていること、悩みなど。
  • 身体的な症状: 痛み、かゆみ、息苦しさ、脚の不快感、夜間頻尿など、不眠以外に気になる体の症状。
  • 既往歴: これまでに罹った大きな病気や怪我。
  • 現在服用中の薬: 病院で処方されている薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて、全て正確に伝えてください。
  • これまで試した不眠対策とその効果: セルフケアや市販薬など、これまで自分で試したこと、そしてその効果はどうだったか。

睡眠日誌をつけておくと、自分の睡眠パターンや不眠に影響を与える要因を客観的に把握でき、医師に正確に伝えるのに役立ちます。数日から1週間程度、毎日の就寝・起床時間、夜中に目が覚めた時間、昼寝の時間、その日の出来事や気分などを記録してみましょう。

不眠が治らない悩みに関するよくある質問

「不眠が治らない」と感じている方が抱きがちな疑問にお答えします。

不眠改善に効果的なサプリメントや健康食品はありますか?

メラトニン、グリシン、GABA、テアニン、セントジョーンズワートなど、睡眠に良いとされる様々なサプリメントや健康食品があります。これらは医薬品ではないため、効果や安全性に関する科学的なエビデンスは限定的です。一部の人には有効な場合もありますが、慢性不眠症に対する確立された治療法ではありません。効果を過信せず、まずは生活習慣の改善や医療機関への相談を優先しましょう。

毎日同じ時間に寝るべきですか?

毎日同じ時間に起きることの方が、体内時計を整える上でより重要です。寝る時間については、眠気を感じてから寝床に入るようにしましょう。無理に寝ようとすると、かえって目が覚めてしまうことがあります。

眠れない夜はどう過ごせばいいですか?

眠れないまま寝床で悶々と過ごすのは避けましょう。「寝床=眠れない場所」というネガティブな関連付けを強めてしまいます。眠気を感じない場合は、一度寝床から出て、リラックスできること(静かな音楽を聴く、軽い読書をするなど)をして過ごし、眠気を感じたら再び寝床に戻りましょう。ただし、スマホやパソコンの使用は避け、照明も暗めにすることが大切です。

不眠は遺伝しますか?

遺伝的な要因が不眠に関わっている可能性も示唆されていますが、不眠の全てが遺伝で決まるわけではありません。むしろ、生活習慣やストレスなどの後天的な要因の方が大きく影響することが多いです。家族に不眠症の人がいても、適切な対策をとることで不眠を予防・改善することは十分可能です。

不眠が続くと、体にどのような影響がありますか?

慢性的な不眠は、日中の眠気や集中力低下、判断力の低下、イライラなどの精神的な不調だけでなく、様々な身体的な健康リスクを高める可能性があります。例えば、高血圧、糖尿病、心疾患、免疫機能の低下などとの関連が指摘されています。また、うつ病や不安障害のリスクも高まります。不眠を放置せず、早めに対策をとることが大切です。

まとめ:治らないと諦めず、適切な対策で不眠を克服へ

「不眠が治らない」という悩みは、心身ともに非常に辛いものです。しかし、不眠は適切な原因の特定と、それに合った対策や治療によって改善・完治を目指せる病気です。「治らない」と一人で抱え込まず、希望を持って一歩を踏み出すことが何よりも大切です。

慢性不眠の原因は一つではなく、ストレス、生活習慣の乱れ、身体的な病気、精神的な問題などが複雑に絡み合っていることがほとんどです。まずは、ご自身の生活習慣を見直し、快適な睡眠環境を整えることから始めてみましょう。

セルフケアだけでは改善が難しい場合や、不眠が長引いて日中の生活に支障が出ている場合は、迷わず医療機関に相談してください。精神科、心療内科、睡眠外来など、不眠を専門とする医師が、あなたの状態を詳しく診察し、最適な治療法を提案してくれます。特に、認知行動療法(CBT-I)は、不眠の根本的な改善に非常に有効な非薬物療法として推奨されています。

不眠治療には時間がかかることもありますが、医師や専門家と協力し、ご自身のペースで根気強く取り組むことで、必ず改善の道は開けます。「治らない」と諦めずに、今日からできること、相談できるところを探してみてください。健康的な睡眠を取り戻し、充実した毎日を送れるようになることを心から願っています。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を保証するものではありません。不眠でお悩みの方は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医
略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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