腋臭症(ワキガ)や多汗症の外用薬|治療のメリットやデメリット、料金について解説
「腋臭症や多汗症を外用薬で治療したい」
「外用薬のメリットとデメリットを知りたい」
などとお考えではありませんか。
腋臭症(ワキガ)や多汗症の外用薬は、症状が出ている箇所に塗布するなどして症状を抑えられる薬です。手術とは異なり症状の原因となる汗腺を取り除くことはできませんが、手術で傷跡が残ることがなく、入院する必要もありません。
このページでは、3種類の腋臭症や多汗症の外用薬、外用薬のメリット・デメリットについて解説します。腋臭症や多汗症の症状でお悩みの方はぜひご覧ください。
当院では患者様一人ひとりに適した治療法を提案し、結果にこだわった治療を行います。
お悩みや症状をしっかりとヒアリングいたしますので、まずは以下のボタンからカウンセリングをお申込みください。
目次
腋臭症・多汗症とは?脇汗に関する2つの悩み
多汗症は人口の2-3%が罹患する疾患で(参考文献9)、患者の日常生活や社会生活に深刻な影響を与えることが知られています(参考文献1)。腋臭症も多汗症と密接に関連し、患者の生活の質(QOL)を大幅に低下させる要因となっています(参考文献12)。
腋臭症は(ワキガ)は、アポクリンせ腺と呼ばれる汗腺から出た汗が、細菌と反応して独特の匂いを発する症状です。一方、多汗症は脇をはじめ手のひらや足などで、過剰な発汗が見られる症状があります。
それぞれの症状は次の通りです。
腋臭症 | 多汗症 | |
---|---|---|
症状 | ・服の脇が黄ばむ ・脇が臭いと感じる ・耳垢がよく湿っている |
・発汗量が多く生活で支障がある ・睡眠中は過剰な発汗がない |
ここからは、それぞれの症状や原因について詳しく説明します。
腋臭症(ワキガ)の症状と原因
腋臭症(ワキガ)は脇から独特な臭いが発生する症状が現れます。
思春期から症状が出ることが多く、毛深い方や肉をよく食べ脂肪が多い方は臭いが強くなりやすいです。そのため、脱毛したり和食中心の食事を摂ったりすることで臭いが軽減することもあります。
腋臭症は、アポクリン腺から分泌される無臭の前駆物質が皮膚常在菌により分解されることで、3-methyl-2-hexenoic acidなどの揮発性脂肪酸を産生し、特徴的な臭気が発生する疾患です。約60%の腋臭症患者で多汗症が併存することが報告されています(参考文献6)。
また自律神経の乱れが腋臭症に関係すると示唆されており、腋臭症の方のうち約60%は多汗症の症状も見られると言われています。
多汗症の症状と原因
多汗症は脇や手足などに過剰に発汗する疾患です。汗が過剰に出て書類が濡れる、他人と手を握ることができないほど汗をかくといった症状があげられます。
多汗症は交感神経が過剰に反応しエクリン腺からの発汗を促すことで起こりますが、99%が水のさらさらとした汗なので、汗の始末を丁寧に行えば臭いは発生しづらいです。
原発性多汗症の治療は、症状の重症度に応じた段階的アプローチが推奨されており(参考文献2)、軽症から中等症では外用薬が第一選択とされています(参考文献3)。交感神経の過活動が主因で、遺伝的素因も関与することが知られています(参考文献7)。
また多汗症は全身から汗が過剰に出る「全身性多汗症」、体の一部から汗が過剰に出る「局所性多汗症」の2つに分類可能です。
さらに局所性多汗症には、手のひらの汗が以上に出る「手掌多汗症」などがあります。
腋臭症・多汗症を治療する外用薬3種類
腋臭症や多汗症の治療方法には手術や局所注射がありますが、内服薬や外用薬を使って症状を緩和させる方法もあります。
腋臭症や多汗症に使用される外用薬は以下の3種類です。
- パースピレックス
- エクロックゲル5%(現時点で当院では取り扱いはございません)
- 塩化アルミニウム液(現時点で当院では取り扱いはございません)
外用薬は症状を抑えるために使用され、特に腋臭症の外用薬は発汗を少なくすること、あるいは皮膚表面の雑菌を除去することで症状を緩和させることができます。
ここからは、それぞれの効果や使用方法などについて説明します。
パースピレックス|医療用の制汗剤
パースピレックスは医療用の制汗剤として用いられる外用薬です。パースピレックスで腋臭症・多汗症の症状を抑える仕組みは次の通りです。
- 塩化アルミニウムが汗腺を塞ぐ
- エタノールが汗腺への角栓を深部まで運ぶ
- 乳酸成分が酸を乳酸に変える
脇以外にも手のひらや足の裏にも使えるため、局所性多汗症の症状緩和にも有効です。
塩化アルミニウム製剤の効果判定には、発汗量の客観的測定(gravimetric法)や患者報告アウトカム(HDSS:Hyperhidrosis Disease Severity Scale)が用いられます(参考文献2)。通常1-2週間で効果が現れ、患者の75%以上で満足のいく結果が得られると報告されています(参考文献15)。
塩化アルミニウム製剤の副作用は主に皮膚刺激症状(かゆみ、紅斑、接触皮膚炎)で、約15-20%の患者に認められます(参考文献10)。重篤な全身性副作用は稀で、局所的な皮膚反応は適切な使用方法により最小限に抑えることができます(参考文献15)。
当院ではパースピレックスの処方を行っています。パースピレックスについてより詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
パースピレックスとは?ワキガの匂いを抑える仕組みや使い方を解説
エクロックゲル5%|脇の多汗症用の外用薬
グリコピロニウム外用剤(エクロックゲル5%)は、ムスカリン受容体拮抗薬として汗腺のアセチルコリン受容体をブロックし、発汗を抑制します。ATMOS-1・ATMOS-2試験では、プラセボと比較して有意な発汗減少効果が確認されています(参考文献5)。患者の77%で2週間以内に改善が認められ(参考文献14)、生活の質の向上も報告されています。
1日1回両脇にゲルを塗布する使い方で、1本あたり2週間分の量が入っています。しかし、以下の方は使用できないため注意が必要です。
- 妊娠している方や授乳中の方
- 12歳未満の方
- 閉塞隅角緑内障の方
- 排尿障害がある方
また、皮膚炎や口の渇きや目のかすみなどの副作用が起こった場合は使用を中断する必要があります。
塩化アルミニウム液|汗腺を塞ぐ外用薬
塩化アルミニウム液は汗腺を塞ぐ治療薬です。
病院やクリニックで塗り薬として処方されるだけでなく、薬局でも塩化アルミニウム成分を含んだ市販品が買えるという利点があります。
塩化アルミニウム製剤は汗管内でアルミニウム水酸化物の沈殿を形成し、物理的な汗管閉塞を引き起こします。多汗症治療における標準的な第一選択薬として位置づけられており(参考文献8)、継続使用により長期的な発汗抑制効果が期待できます(参考文献15)。
副作用としてかゆみが出る場合があるため、ティッシュなどにしみこませて部分的に塗布することが大切です。
腋臭症・多汗症の外用薬のメリット
腋臭症・多汗症の外用薬のメリットは、以下の3つです。
- 多汗症やワキガ手術のデメリットを避けられる
- 子どもでも症状を抑えられる
- 飲み薬よりも副作用のリスクが少ない
ここからは、それぞれのメリットについて解説します。
メリット①多汗症やワキガ手術のデメリットを避けられる
腋臭症や多汗症の外用薬は手術のデメリットを避けられます。
多汗症やワキガの原因となる汗腺を取り除く「皮弁法」と呼ばれる手術は、傷口がしばらく残るほか数日間の入院が必要です。
それに対して、外用薬は傷跡が残らず入院も不要なので、手術のリスクを避けたい方におすすめです。
メリット②子どもでも症状を抑えられる
外用薬は子どもにも活用しやすく、手術を受けられない方も症状を抑えられるのが利点です。
小児・思春期の多汗症・腋臭症では、アポクリン腺の発達が未完成であることから外科的治療は推奨されず、外用薬による保存的治療が標準となります(参考文献8)。12歳以上ではグリコピロニウム外用剤の使用も可能で、安全で効果的な治療選択肢となっています(参考文献5)。
そのため、子どもの腋臭症・多汗症は外科的手術での治療がおすすめできません。
外用薬は手術ができるようになるまで症状を抑える方法としても、選びやすいのがメリットです。
メリット③飲み薬よりも副作用のリスクが少ない
腋臭症や多汗症の外用薬は、飲み薬よりも副作用のリスクが少ないといったメリットもあります。
全身投与の抗コリン薬(臭化プロパンテリンなど)では口渇、便秘、眠気などの副作用が高頻度で発現し(参考文献6)、外用薬の方が副作用プロファイルに優れています。外用薬は局所作用により全身への影響を最小限に抑え、より安全な治療選択肢となります(参考文献10)。
また内服薬で発汗量を減らしてしまうと、汗で熱を逃がせずに体がほてることがあるため注意しなければなりません。
多汗症の治療ガイドラインでは、外用薬による保存的治療を第一選択とし、効果不十分な場合にボツリヌス毒素注射、最終的に外科的治療を検討する段階的治療アプローチが推奨されています(参考文献2, 10)。この治療戦略により、患者の負担を最小限に抑えながら最適な治療効果を得ることができます。
腋臭症・多汗症の外用薬のデメリット
腋臭症・多汗症の外用薬のデメリットは、長期的に使用し続ける必要があることです。
手術とは違い外用薬は腋臭症・多汗症の症状を抑える薬なので、腋臭症や多汗症の原因となる汗腺はそのままの状態です。そのため、外用薬では症状が一切出ないように治すことはできません。
更年期(50代)になると症状が軽快していく可能性はありますが、外用薬のみだとそれまで使い続ける必要があります。
外用薬治療は症状の対症的管理ですが、患者の生活の質(QOL)を有意に改善し(参考文献4)、社会生活や職業生活への影響を軽減することが確認されています(参考文献1)。継続使用により長期的な症状管理が可能で、多くの患者で満足のいく治療効果が得られています(参考文献14)。
腋臭症・多汗症の治療に関するよくある質問
腋臭症・多汗症の治療に関するよくある質問とその回答についてまとめました。
Q.治療薬以外で腋臭症・多汗症を治療する方法はありますか?
治療薬以外で腋臭症・多汗症を治療する方法には、以下のようなものがあります。
- 手術(皮弁法)
- ミラドライ
- ボツリヌス製剤注射
- クワドラカット法
中でもミラドライは切開せずに治療できることが特徴で、ボツリヌス製剤注射は一度の施術で約4〜9ヶ月の間発汗を抑えられるのが特徴です。
そのほか、多汗症の治療には「交感神経遮断術」や「イオントフォレーシス」といった治療法もあります。
腋臭症や多汗症の手術・治療方法について詳しく知りたい方は、以下のページもあわせてご覧ください。
多汗症・手掌多汗症の手術とは?多汗症・腋臭症(ワキガ)の症状と治療法について解説
Q.ワキガや多汗症を自力で治す方法はありますか?
腋臭症(ワキガ)や顔・脇・手足などに出る多汗症を自力で治すことはできません。
ただし、生活環境を整えることで症状を緩和させることが期待できます。
腋臭症の臭いを軽減させたい場合、野菜を中心にした食事を心がけ、油分や脂肪分は控えめにすることが大切です。
ストレスが原因で多汗症の症状が出ている場合、ヨガやウォーキング、ストレッチといったゆったり行えるトレーニングを取り入れてみましょう。多汗症は精神性発汗なので、心身の状態を改善させることで症状の緩和が期待できます。
Q.腋臭症・多汗症の外用薬治療は保険適用になりますか?
腋臭症・多汗症の外用薬治療は、エクロックゲル5%のみ保険適用となります。
パースピレックスや塩化アルミニウム液は脇以外の手のひらや足裏部分にも使えるものの、保険適用外なので費用は全額自己負担です。
腋臭症・多汗症の外用薬の料金
当院では腋臭症や多汗症の外用薬として「パースピレックス」をご用意しております。
パースピレックスの料金の詳細は、多汗症の料金表をご覧ください。
腋臭症・多汗症の外用薬の処方は当院にご相談ください
腋臭症や多汗症は、手術以外に外用薬での対処も可能です。腋臭症・多汗症の外用薬には、以下の3種類があります。
- パースピレックス
- エクロックゲル5%
- 塩化アルミニウム液
外用薬は症状の緩和ができ、手術のように傷口が残ることがないのがメリットです。
腋臭症(ワキガ)や多汗症でお悩みの方、外用薬の処方を検討されている方はアイシークリニックにご相談ください。
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